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お知らせ 2024.08.22【保育バカ一代】vol.9 涙のキッズ もう一度
私が保育園に勤めて5年目の春に入園したA子ちゃん(2歳)は、とにかく私のことが大っ嫌いだった。
私の顔を見ただけでビエ~ンと泣き、私が同じ空間にいるだけでもビエ~ンと泣いた。
まさに顔も見たくない、存在自体が許せない、である。
ここまで嫌われると逆に面白いので、私は毎日「A子ちゃんオハヨー♪」と声を掛けて、わざとビエ~ンと泣かせて楽しんだ。
まさにゲスの極みだが、まわりの先生たちは私のことを咎めずにこう言った。
「S子ちゃんもそうだったから、きっと大丈夫だよね」
S子ちゃんはA子ちゃんよりひとつ年上で、やはり1年前は私のことが大っ嫌いだった。
少しでも私が視界に入ろうものならこの世の終わりのようにギャン泣きしたが、やはり私はそれが面白くて、毎日「S子ちゃんオハヨー♪」と声を掛けた。どんなにギャンギャン泣かれても「S子ちゃんがしげ先生のことを嫌いでも、しげ先生はS子ちゃんのことが大好きだよ」という気持ちを込めて。
入園からおよそ3ヶ月後、ついに私の気持ちがS子ちゃんに届いた。
私と一緒に遊んでくれるようになったし、オムツ交換や寝かしつけもさせてくれるようになった。
ところが、今度は他の先生がS子ちゃんのお世話をしようとすると「しげせんせいがいい~(涙)」と泣くようになってしまった。私を嫌っても、私になついても、結局泣いてばかりのS子ちゃんだった。
まわりの先生たちの言った通り、A子ちゃんもやがて私になつき、一緒に遊んでくれるようになった。
A子ちゃんが「バーン!」とピストルを撃つ真似をして、私が「ウギャ~」とやられた真似をすると、A子ちゃんはキャッキャッと声を上げて喜んだ。こんな風に笑う子だったんだ、と驚いたのを覚えている。
「子どもたちの笑顔のため」という言い方は、あまり好きではない。私は子どもに笑顔を求めるのではなく、自分が笑顔で子どもの喜怒哀楽を受け止める者でありたい。
事務局スタッフ“しげさん”による時に温かく、時にユーモラスな保育エッセイ♪
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