特定非営利活動法人バディチーム
寄付する
インタビュー 2023.02.10

【他団体・多職種による情報共有・事例検討会】vol.3 れもんハウス

2022年11月26日(土)、日本財団の助成事業『訪問型養育支援強化事業』の一つである『他団体・多職種による情報共有・事例検討会』の第三弾を開催しました。

 

今回は、大人も子どもも様々な人が自由に集う西新宿の一軒家「れもんハウス」を運営されている一般社団法人青草の原 代表理事の藤田琴子さんにお話を伺いました。

 

一般社団法人青草の原 代表理事 藤田琴子さん

 

藤田さんは母子生活支援施設の職員としてもお仕事をされています。

また、れもんハウスは新宿区の子どもショートステイ事業の協力家庭でもあります。バディチームも2022年に協力家庭になるための研修を受講しましたので、現場研修の場としてもお世話になっています。

 

 

―最初に、れもんハウス設立の経緯を教えていただけますか?

 

私たちは一般社団法人青草の原という団体としてれもんハウスを運営しています。

青草の原自体は「それぞれが自分として大切にされ、愛され、安心できる場、生きるために必要な栄養と休息が得られる場。そんな場と出会いをつくっていくこと、広げていくこと」を目指している団体で、れもんハウスをスタートするということで団体を作りました。

 

れもんハウスは2021年の11月にスタートをすることになりまして、その中で「大切にしたいな」ということで出てきた言葉が「あなたでアルこと ともにイルこと」という言葉です。

 

どのように始まったかというと、もともと私は母子生活支援施設で勤めている中で、親子が行き詰まってしまったときなどにパッと来られる場所や、親子で少し距離をおきたいというようなときに泊まれる場所があったらいいな、あるいは、公的な枠組みの中ではカバーしきれない部分をもう少し自由にすることができる別拠点がほしいな、ということを思っていました。

 

その時に西新宿に一つの一軒家を見つけて、「ここだったらいろいろなことができるかもしれない」と思い、いろいろな人に相談していく中で、千年建設株式会社の岡本拓也さんがすごく共感してくださいました。

この会社ではLivEQualityという事業をされていて、その中でひとり親や女性の居住支援などをされています。それで、もともと売り物件だったこの一軒家を買い取った上で賃貸借契約を結ぶというスキームを作ってくださいました。

 

同時並行で「We are Buddies」という一般社団法人を運営している加藤愛梨さんと西角綾夏さんが大人や子どもの交流できる場所を作れたら、ということを考えていたようで、ちょうどタイミングが良かったのと、れもんハウスのコンセプトも少し似ている部分があったので2階の2部屋に2人に住んでもらうことになりました。

 

―すごいご縁とタイミングが重なったのですね!

れもんハウスは具体的にはどんな場所なのでしょうか?

 

れもんハウスの活動内容は「いろいろ自由に」という感じではあるのですが、一応ホームページなどに出しているのは「アル場所イル場所」という言葉です。

特に誰か特定の対象を作っているわけではなく、最初は「つながりのある人たちからまた広がっていく」というようなかたちで、大人も子どももいろいろな属性の人たちが自由に集まって、自由に過ごしていく場になっています。あるいは、若者が宿泊する場所になっています。

新宿区の子どもショートステイの協力家庭にも登録していまして、ショートステイの依頼があったときはお子さんを預かって一緒に暮らしています。

 

あとは、皆さん、れもんハウスに来ると「ここでニンジンを植えたい」、「こんな棚を作りたい」、「最近パン作りにはまっているからパン教室をやりたい」など、いろいろと言ってくれまして、それぞれがやってみたいことを自由に行う、そんな場にもなっています。

 

 

―どんな方が集まってこられるのですか?

 

この1年間、実際にどういった方が来られたかというと、属性では学生、小学校の学齢期の子もいれば、学校に行っていない子もいます。また、お仕事をしている人の中ではバリバリ働いている人もいれば、休職中、例えば、ちょっとメンタルを崩して休んでいる人や就活中の人もいます。

働き方も、雇われている人もいれば、自分で事業を手掛けている人もいますし、子育てをしている人や子どものいない人もいて、本当に多種多様な方々がいらしていたと思います。

 

また、皆さんのテンションというか気持ちも、楽しい気持ちの方や人生に充実感を持っている方もいれば、この場所に人の温かみを求めて来られる方だったり、具体的に食べ物を求めて来られる方もいます。

元気がない人たちばかりが集まる、というわけではなく、偏りがないのでその点もれもんハウスの良いポイントだと思っています。

来られる方の年齢は10代、20代、30代が割と多めではあります。ですので、若者の孤立を防ぐ役割もあると思っています。

 

―さまざまな人たちの居場所となっているのですね。

 

そうですね。れもんハウスに来てくれる人の中では「何かを相談するためにここに来るというよりも、ここに来たついでにそんな話になっていた」ということがよくあります。

 

ここで過ごす中で、その場にいる人たちの間でなんとなく人生相談が始まっていたり、一緒にご飯を食べたりする中でちょっと身の上話をしてみたりとか。

 

そういった人たちが残してくれた言葉があります。

「帰る場所って一つじゃなくてもいいんだ」、

「あちこちにたくさん『ただいま』が言える場所があってもいいんだ」などです。

 

「安心」や「一人じゃない」ということ、あるいは「自分でアル」ということ、

それを尊重されることをそれぞれが感じ取って、物理的には一人でも、れもんハウスに行けばあの人たちがいると思ってもらえるつながりが少しずつできていると思っています。

 

 

 

―ありがとうございます。自然に相談できる雰囲気になるというのが本当にいいですね。多様な方がいて、エネルギーのある人だけが固まるわけでもなく、ない人だけが固まるわけでもないところがすごいと感じました。

来られる方については「来るものは拒まず」という感じですか。

 

うーん、そのあたりはこの1年が過ぎてみて難しさを感じたことはやはりあります。れもんハウスに来られる方にとってれもんハウスが安心できる場であるかどうか、よく来られる人や住民メンバーが心地よく暮らせているか、そういったことが大事だ、という思いはあります。

ですから、基本的に「どうぞ」というスタンスではあるのですが、「こういう場面でこの子がいると、お互いにとてもしんどくなってしまう」など、そういうタイミングがあるときはお互いのニーズをその都度話し合い、対話しながら決めていくところはあります。

 

―本当にコミュニケーションをしっかりとりながら細やかにされていますよね。

 

そうですね。「こういう人は駄目」という線引きよりも、その日、その時、その場でのその人との関係性やフィーリング、お互いが健康でいられるかを大事にしています。

 

―なるほど。

 

そういう意味では曖昧さもありかなり非効率だと思います。

けれども、そういったコミュニケーションをとっていくことが割と好きなメンバーではあると思います。ある意味、れもんハウスの中で出来上がってきている文化でしょうか。

一律でルールを決めるというよりも、その時その時、一緒に話し合ってお互いの心地よい部分を探っていく、そうしたところはあるかもしれないです。

 

―コミュニケーションによってお互いに心地よいところを探っていくのですね。

現代においてはなかなかできないことなのですごいと思います。

それでは、ここからは母子生活支援施設のお仕事について教えてください。いつからお仕事を始められたのですか?

 

大学卒業後、大学は特に福祉関係ではなかったので専門学校に1年行きました。

そして、2015年の春から今の施設で働いています。最初の2年ぐらいは今の施設と、LITALICOという療育などを行っている会社と掛け持ちのダブルワークで働いていました。

その後、母子生活支援施設のほうで正職員の枠が空いたので正職員になりました。

 

―最初から母子生活支援施設で働くことを目指されていたのでしょうか?

 

いえ、全然違います。もともと福祉というワードは大学生の時には全く頭の中にありませんでした。児童労働や難民などに興味があり関わっていたのですが、卒業後の仕事はどうしようと考えたときに4年生の夏から秋ぐらいに、ひとまず、日本にいる難民の子どもに焦点を当てて働いてみようかな、と思いました。

 

でも、そういったことに関係している組織はNPOが多いので新卒ではなかなか入れませんでした。その時に「社会福祉士というものがあるよ」と言われ、「へえ、そんなのがあるんだ」と思いました。

調べてみて「いままで私が関心を持ってきたことは、社会福祉士にけっこう近い」と思いましたし、社会福祉士の資格を使った仕事に就くかは分からないけれども、社会福祉士になるための学びは人と関わることにおいて無駄にはならないだろう、と感じました。

 

日本にいる難民の子どもに関わる、ということ考えたときに福祉の知識は使えると思いましたし、多文化ソーシャルワークという分野にも少し興味があったので専門学校に行きました。

その時の実習先がたまたま今の母子生活支援施設でした。その施設が新宿にあるということもあって、外国にルーツを持つ親子も多かったですし、職員さんたちはすごく温かい目でまなざしを持って親子に関わっていました。その感覚みたいなものに「私もこの人たちと働いてみたい」という気持ちがすごく湧いて、その施設に就職しました。

 

―なるほど。長くその施設で働いていらっしゃる中で、そこでのお仕事や生活はどう感じていらっしゃいますか。

 

本当に何でも屋さんだなと思っています。入ってきた親子にとって何が必要かということを個別に考えながら、例えば生活面ならお部屋に入って「おはよう」と起こすことから始まり、お掃除などの生活に密着した部分でもサポートしますし、書類関係などの手続きのサポート、公的なサービスを使うためのつなぎ、離婚など調停に関しての手伝いもします。

人間関係の相談もあるし、子育てのしんどさや「どうしたらいいんだろう」という相談もあります。

 

子どもに対しても、一緒に遊ぶ中でおうちの環境が見えてくることもあります。

小学生ですと学童保育で一緒に勉強したり遊んだりという中で関係性を作っていき、感情のコントロールが難しい子、自分の気持ちがなかなか言葉にできない子に、その都度その都度、「いま、こんな気持ち?」、「どの段階で限界だったの?」など聞いたりします。

中高生も学習支援をとおして思春期ならではの相談を聞きます。

 

年齢を問わず、それぞれ、個々のしんどさや喜びに触れられるというのは私にとっても面白みがあり、すごく深い学びの現場にいさせてもらっていると思いますね。

 

―これは最初に気になっていたことなのですが、母子生活支援施設にはどういうきっかけで入るのですか?また、どういう方が入れますか?

 

そうですね、離婚は成立していなくても別に大丈夫です。未婚の方もいらっしゃいます。

メンタル面の心配のある方、知的ボーダーの方、生い立ちにいろいろなことがあり育児に対しての不安がすごく強い方、子どもに愛情はあるけれどもどう接したらいいか分からない、という方など本当に様々です。経済的な理由や母子生活支援施設にいる間に貯金したいという方、お仕事を始めるために入るという方もいますね。

 

―入りたい方は順番待ちになっているのでしょうか?

 

新宿区ではそれなりに応募はありますが、他区を含め全国的には母子生活支援施設は空きばかりなんですよ。

 

―本当ですか!

 

そうなんです。せっかく様々なサポートがあるのに、それがものすごくもったいないと思っています。ただ、サポートも施設によってあり方が違うので入ってみたら逆につらかった、という面もあり、これは母子生活支援施設業界の課題になっています。ここ十数年、ニーズはあるのに施設は減っていますし、空きばかりで運営も大変、それが課題です。

 

―施設によってサポート内容や範囲が違うのですね。「これだけは行う」というような基準はないのですか?

 

「自立」をどのように捉えるかにもよって違ってくるかもしれません。

私のいる施設は経済的な自立が最優先というわけではなく、それよりも地域に出てからいろいろなことが起こるだろうけど、「全部自分でやらなきゃ」というメンタリティではなく、「いろいろな人に助けてもらいながらヘルプ出しができることのほうが生きる上で大事」という考えがあります。

「自分がSOSを出したら、反応して、一緒に考えてくれる人がいるんだ」という成功体験や安心感などを育むことが根本的には大事だろうと思っています。

「無理して働いて仕事でストレスがたまって、子どもにあたってしまう」というようなことになるよりは生活保護を使いながらパートなどで働いて、ある程度心に余裕がある生活のほうがいいのではと思います。

 

―確かに、自立に対する考え方は違うのかもしれませんね。

では、施設にいられる期間というのはその施設の判断ですか?ご本人が早く出たいと思っている、逆にずっといたいと希望している、それぞれあると思いますが。

 

入所期間は法的には定められていないのです。自治体や施設によってある程度は決まっているところもありますが東京の23区内では原則2年間としているところが多いです。なぜ2年間かというと、何年もずっといると他にもニーズがある方が入れないということもありますし、2年という期間だからこそ、職員もその2年を濃密に関わろうというモチベーションが湧く、という考え方があったからだそうです。

 

また、入所している親子も2年間だからこそべったり甘えられるという側面があったり、「この施設にずっといられるからオッケー」ではなく「この先、自分たちが退所後に生活していくためにはどうしたらいいか」と考えるためにも2年という区切りが必要だという考えがありました。しかし、そういった意図を持つ2年間という枠組みが、守らなければいけない期限として形骸化していっているのではないかという懸念があります。

 

子どもが0歳で入所すると退所時には2歳になるんですよ。でも、2歳児って一番大変じゃないですか。イヤイヤ期でいたずらもするし、自己主張も始まっています。そのタイミングで退所はしんどいだろうというのはやはりあります。だから、そのあたりは個別性を大切にしてもう少し柔軟に対応してほしいなと思います。

 

―そうですよね。入所される最初のきっかけが妊娠や出産のタイミングという方が多い中で、期間が2年だとどうしてもそうなってしまいますものね。

 

施設を退所した後の母子とのつながりについても教えてください。退所後は施設とは一旦すっぱり切れて、以降は子ども家庭支援センターなどが支援していくというイメージだったのですが、以前にお話をうかがったときに「退所後もつながりがある」ということを仰っていましたが、実際はどんな感じなのでしょうか?

 

そうですね。その部分はすごく大事にしています。やはり2年かけて関係性を作っておいて退所時に「じゃあ、いってらっしゃい。バイバイ」というのはあまりにも侘しいですし、向こうも「えっ、いままでの関係はなんだったの」と思うでしょう。そもそも児童福祉法でも母子生活支援施設の役割としてアフターケアも含まれています。

 

「私たちはこれからもずっとつながりつづけるよ」ということも含めて入所中から伝えていますのでお母さんたちも子どもたちも遊びにきてくれますし、退所者からの電話も必ず毎日あります。こちらが駆けつけることだってありますよ。地域の保健師さんなど、いろいろなところと連携しています。

 

―素敵ですね!施設に遊びに来てくれたりすると本当に安心できますよね。そういう施設はなかなかないような気がします。

でも、れもんハウスを作るきっかけとしてはこうした素晴らしい施設でも遊びにくるのが難しい方や大変な方などの取りこぼされる方がいて、そういった方でも気軽に来られる場所を作りたかったということですよね。

 

コロナ禍で退所した人たちが気軽に来られなくなったということがあります。今までだったら本当に皆さんよくいらしていたんですけれど、コロナで気軽に遊びに来るということができなくなりました。私もすごくもどかしく感じました。

 

―そう思うと、れもんハウスさんはコロナ禍の中で誕生し、スタートされましたね。

 

はい。確かにそうですね!ただ、結構ジレンマはありました。

コロナが一番大変だった初期の頃は「とにかく隔離、接触しない」という感じでしたので、必要最低限という関わりがどのラインなのかわからなかったです。

 

それから、退所した人たちの中でもすごく我慢している子どもたちや親御さんがいることを知りながらも、「コロナだから行けない、ごめん」となるところにモヤッとしていました。

自分を殺して、我慢して我慢して、さびしい気持ちにふたをして、という親子がいて、彼らがコロナにかかってしまうリスクと、彼らの心が死んでいくリスクをどう考えていくのか、そこがすごく問われたと思います。不要不急ってなんだろう、というようなことを思っていました。

 

―でも、そんなコロナ禍の中でもれもんハウスをオープンさせて、いろいろな人が来られるというスタイルを貫き通したということでしょうか。

 

大々的にオープン、というようなことはできなかったですけれどね。

少ない人数ながら退所した親子にとっても必要な場所になったと思います。

 

―なるほど。母子生活支援施設も退所した親子さんが行くことはできるけれども、そこでご飯を食べたり寝泊りをしたりということまではできませんからね。れもんハウスならそういったこともできますしね。

また、コロナ前までは支援が受けられていたけれど、それがなくなってしまった人たちをれもんハウスが受け止めるということも設立の出発点だったのですか?

 

はい。私にとってはそこが出発点というかモチベーションというのでしょうか。「こういうところが必要だ」という思いがありました。

ただ、私自身、「母子のためだけの場所」というイメージはなく、いろいろな方が来られたらいいな、という思いもあり、始まってみるとやはり住民2人の関係やいろいろな大人や子どもたちがいい感じにミックスされて、変に属性が偏らないところができたと思います。

青草の原のメンバーも理事を務めてくださっている方がミュージシャンだったり、児童福祉関係ではないIT関係、国際協力系など、いろいろなバックグラウンドのあるメンバーが一緒に場を作っていっています。その点は広がりがあり面白いと思っています。

 

―ありがとうございます。

以前お話を伺ったときに「ゆるゆる」という言葉がたくさん出てきたのが印象的でよく覚えているのですが、良い意味でゆるゆると様々な人を受け入れて、関わる方々とコミュニケーションをとりながらやっていくことはすごく大事だと思いました。

 

 

ーでは、もし今のれもんハウスに課題があるとしたらなんでしょうか?

それから、今後の展望についてもお聞かせください。

 

まず課題については、れもんハウスにはどうしても物理的なキャパシティーがあるので、ショートステイを受け入れているときにまた別の依頼が来くると受け入れたい気持ちはありますが場所的にも人員的にも限界があります。

ですので、例えば地域の人たちの中で「娘の部屋、息子の部屋が空いています」というようなおうちがあれば、れもんハウスでご飯を食べた後はその人のおうちに行って宿泊させてもらうなど、そんなつながりを作ることができれば「地域で子育て」という広がりがもう少し生まれてくるのではないかと思っています。

 

新宿区にはいろいろな機関や資源があるので、もう少し顔の見える有機的な関係作りを仕掛けたり、何かをやりたいと思っていながら「何ができるのだろう」と思っている人をつなげられたらいいですね。

 

それから、来年度から「親子のショートステイ」を新宿区もスタートしますので、その受け皿としてれもんハウスを使ってもらえることになっています。ほかの自治体でも親子ショートステイがどんどん広がるようにアピールできたらと思います。

 

―それはいいですね。れもんハウスさんのようにこれだけの受け入れ能力があったら親子のショートステイも出来てしまいますね!

 

ありがとうございます。

実は来年度から母子生活支援施設の正職員を辞めてパートで働こうと思っています。さすがに時間がなくて。ただ、れもんハウスをさらに整えたり充実させたりというよりも、れもんハウスみたいな場所が各地にもっと生まれたらいいなと思っていて、そういった広がりをどう作っていくかという点に力を注いでいきたいです。

 

―そうでしたか。来年度からまた新たな境地ですね。

最後に藤田さんご自身のことを少しお聞かせください。

「れもんハウスを思いつき、実際に設立された『藤田琴子さん』という人はどうしてそれができるんだろう?」と思ったのですが、子どもの頃からどんな環境で育ったのですか?

 

私は小さい時から教会に通っていまして、親だけに育てられたという感覚があまりなく、いろいろな方々からいろいろな言葉や体験、遊びに触れさせてもらいました。そこからの学びも大きかったですし、愛情ももらっていました。

「どんな人も私を大事にしてくれた」という感覚がとてもあります。

そして「私はこう考える、あなたはどう考えるの?」など、そういう対話をとても大事にしてきてくれました。

 

それと私は思春期の頃から、家があまり好きじゃなくなっていたんですね。家に帰りたくない病にかかっていたようなものですけれど。

そういう時も少し上のお兄さん、お姉さんが飲みに行くのについて行かせてくれて、ちょこんと隣に座らせてくれたり、「家に帰りたくない」となったときに話を聴いてくれたりしていたんです。

そこですごく救われたんです。逃げ場があったというのは良かったですね。

一方で、親にとってその状況は相当しんどかったと思います。でも、そのしんどさをきちんと相談できる人は周りにいたようで、ほかの家のおばさんが「お母さん、この前泣いていたよ」と話してくれたりしました。

その時の私は半分は「なんでわかってくれないんだろう」というような気持ちがありましたが、私と親をつないでくれるコミュニティがあったのでそれは良かったと思っています。

 

―それはすごいですね。藤田さんが育ったのは東京でしたっけ?

 

そうです。教会は中目黒の教会です。

 

―大都会の中でもそんなつながりができているのですね。

親だけではなく様々な人たちから愛情を受けて大切にされてきたこと、思春期の頃の辛かったときも自分を尊重してもらえたこと、家族を丸ごと支えるコミュニティがあったこと、藤田さんのご経験の全てがれもんハウスにつながっているのですね。

 

貴重なお話をありがとうございました。今後の展望もお聞きできましたし、私たちも引き続き新宿区のショートステイ事業では勉強させていただきたいと思います。

これからもよろしくお願いします。

 

※子どもショートステイとは?
保護者の出産や病気での入院、家族の介護、育児疲れなどで昼夜を通してお子さんを養育する方がいないときに、区内の乳児院や協力家庭でお預かりをする制度です。

 

▼一般社団法人 青草の原(れもんハウス)
https://aokusa.or.jp/

▼LivEQuality
https://livequality.co.jp/

▼一般社団法人We are Buddies

https://wearebuddies.net/

 

日本財団助成事業『訪問型養育支援強化事業』についてはこちらのページをご覧ください。

この記事をSNSでシェア

【2月3月】子育てパートナー募集説明会のお知らせ(オンライン)

お知らせ 2025.02.06

【保育バカ一代】vol.31 勝手にRちゃん

コラム 2025.01.23

【出張講座レポート】 文京区 本駒込南児童館

講座・イベント 2025.01.15