特定非営利活動法人バディチーム
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コラム 2022.08.31

【保育バカ一代】vol.5 中国からきたSちゃん

認可外の小さな保育園で働いていた私は、3年目の春に初めて担任としてクラス運営を任された。
幼稚園なら年少組に該当する3歳児クラスだった。

 

ただでさえ初めての担任業務に不安でいっぱいだったのに、さらに私を悩ませる事態が起きた。
中国から来日したばかりの女の子、Sちゃんが私のクラスに入ったのだ。
お母さんはカタコトの日本語を話すが、Sちゃんは全く日本語が話せない。おまけに男の先生が苦手ときている。泣いてばかりのSちゃんに私は何もできず、毎日となりのクラスの女の先生の手を借りていた。

 

ところが、2~3ヶ月も経つとSちゃんは私のことを全く怖がらなくなった。それどころか、クラスで一、二を争うほどの甘えん坊になっていた。しかも、日常生活に困らない程度の日本語をマスターして、保育園の生活を楽しむようになっていた。これらは全て、同じクラスの園児たちのおかげだった。

 

3歳児クラスの園児たちは元々この保育園に通っていて、前年度は2歳児クラスにいた。私も前年度は2歳児クラスの保育補助だったので、園児たちと私の関係はすでに築かれていた。きっとSちゃんは他の園児たちが私に甘えるのを見て、私が敵ではないと理解したのだろう。

 

また、毎日園児たちがSちゃんに日本語で話しかけて一緒に遊んでくれたおかげで、Sちゃんは年相応の生きた日本語をどんどん吸収していった。Sちゃんが私に心を開き、保育園に溶け込んでくれたのは、紛れもなくまわりのお友達のおかげだった。もしもこれがSちゃんと私のマンツーマン保育だったら、ここまで順調にはいかなかっただろう。

 

「子どもが2人以上の保育は難しそう」「どうやって複数の子どもを同時に見ればいいのかわからない」と思う人の気持ちは私にもわかる。
しかし、そこにはマンツーマン保育では得られない発見や喜びがあることを忘れないでほしい。

 


 

事務局スタッフ“しげさん”による時に温かく、時にユーモラスな保育エッセイ♪ 

過去の記事はこちらからご覧ください!

▼vol.1 「北斗の拳」と見守る心

▼vol.2  涙の理由(わけ)

▼vol.3 子ども騙しが子どもに通じなかった件

▼vol.4 送迎バスの思い出

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