特定非営利活動法人バディチーム

【保育バカ一代】vol.7 Tくんと謎のマジシャン

Mr.ロバート。それは昔、ある保育園のお誕生日会やクリスマス会に現れた、謎のマジシャンの名である。
まあ正体は私なのだが、チョビヒゲと蝶ネクタイだけのバレバレな変装で、名前も当時の園長がテキトーにつけた。クルクル巻いた新聞紙を一瞬で花に変えたり、蓋を開けずにペットボトルの水をジュースに変えたりと、子どもが見てもわかりやすい手品を披露した。

 

手品を終えた私が変装を解いて保育に戻ると、5歳から6歳の園児たちがニヤニヤしながら「あれ~?しげ先生、手品の時はどこにいたの~?」と聞いてきた。私も笑って「うん、ちょっと用事」とシラをきった。わかりきっていることをしらじらしく聞いてくるところが、さすがもうすぐ一年生の子どもである。

 

ところがある日、6歳のTくんが真剣な表情で私にたずねてきた。

 

「ねえ、誰にも言わないから教えて!ロバートさんの正体はしげ先生なの?」

 

私は驚いた。みんなにバレバレだと思っていたMr.ロバートの正体が、Tくんにとってはまだ謎だったのだ。だが、ここで「えー!知らなかったの?」などと言うのはヤボだろう。それではあまりにもTくんが気の毒である。私はTくんの申し出を受け入れ、真面目に質問に答えることにした。

 

「本当に誰にも言わない?」

 

コクンと頷くTくん。

 

「約束だよ」

 

さらに強く頷くTくん。

 

私はわざとらしく周囲をキョロキョロ見回して、Tくんにそっと耳打ちした。

 

「……そうだよ」

 

Tくんはニマ~と笑みを浮かべ、納得したようにウンウンと頷いた。まるで「僕だけが知っている、しげ先生の秘密」と言っているかのように(みんな知っているけど)。Tくんと私との間に、男と男の約束が交わされた瞬間だった。

 

あれから十数年、Tくんは今もあの約束を守り続けているのだろうか。

 

 


 

事務局スタッフ“しげさん”による時に温かく、時にユーモラスな保育エッセイ♪ 

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▼vol.2  涙の理由(わけ)

▼vol.3 子ども騙しが子どもに通じなかった件

▼vol.4 送迎バスの思い出

▼vol.5 中国からきらSちゃん

▼vol.6 子どもと発熱とノートPCと

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