特定非営利活動法人バディチーム

【保育バカ一代】vol.4 送迎バスの思い出

私が勤めていた保育園の送迎バス(ワゴン車)の利用者に、同い年のSくんとRくんがいた。

Sくんの家が一番遠く、Rくんの家が二番目に遠かったので、帰りのバスは必ずこのふたりが最後まで残った。入園から卒園までの長い間バス登園を続けた、送迎バスの主(ぬし)といえるコンビだった。

 

私が帰りのバスに添乗する日、他の園児が全員バスを降りて残りがSくんとRくんだけになると、ふたりはいつも「怖い話をして!」と私に言った。

私が話すのはありふれた怪談だが、ふたりとも喜んで聞いていた。暗くて狭い車内に少人数という親密な空間が、怪談話を一層盛り上げたのだろう。

 

ところがある日、どういう気まぐれか「アンパンマンの面白い話をして!」という変化球が飛んできた。私は困惑しながら少し考え、即興でこんな話をした。

 

「カバおくんが夏休みの宿題をみみ先生に見せました。昆虫の研究をしたそうです。ところが、そこには『甲虫王者ムシキング(※当時人気のゲーム)の研究』と書かれていました。カバおくんはみみ先生におしりをペンペンされました」

 

一体どこが面白いのかわからないが、ふたりとも手を叩いて爆笑した(「おしりペンペン」がツボにはまったのだろう)。

子どもがちゃんと座って聞いてくれるので安全性が向上するし、毎日遅くまで園で過ごす彼らを笑顔で家に送ることもできる。バカ話もバカにできない。運転手は運転に集中し、添乗員は子どもたちに専念する。そんな2人体制だからこそ可能だった。

 

2021年7月、福岡で保育園児が送迎バスに取り残され、熱中症で亡くなった痛ましい事故があった。その保育園では運転も含めて園長が1人で送迎していたという。2人体制なら防ぐことができたのではないかと悔やまれてならないが、たとえ複数の人員を配置しても「他の人がやってくれるだろう」では意味が無い。

 

ひとりひとりが自分の役割を果たすこと。互いに連携すること。どちらも忘れてはならない。

 


 

事務局スタッフ“しげさん”による時に温かく、時にユーモラスな保育エッセイ♪ 

過去の記事はこちらからご覧ください!

▼vol.1 「北斗の拳」と見守る心

▼vol.2  涙の理由(わけ)

▼vol.3 子ども騙しが子どもに通じなかった件

 

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