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【イベントレポート】里親子を社会で支えるためのトーク&ミーティング~社会的養護への地域住民の参画を考える~
2024年12月21日、オンラインイベント「里親子を社会で支えるためのトーク&ミーティング~社会的養護への地域住民の参画を考える~」を開催しました。
2024年度からの「里親支援センター」の創設など、里親を「増やす」と同時に「支える」ために国の制度の拡充が図られている中、専門職による支援や里親どうしのピアサポートだけでなく、地域住民(非専門職)が参画する里親家庭支援に焦点をあてて、里親当事者の体験談とともに語り合いました。
全国の児童相談所や支援機関の職員を中心に65名以上が参加した当日のもようをレポートとしてお届けします。
※ここにご紹介するのはイベントのほんの一部です。ぜひアーカイブ動画で全編をご覧ください!
■出演者
岡田妙子:NPO法人バディチーム 代表
濱田壮摩:NPO法人バディチーム 理事
村岡輝彦:NPO法人バディチーム 事務局
八谷斉:認定NPO法人優里の会 副理事長
中村恭子 ほか熊本県の里親3名:認定NPO法人優里の会 くまもと里親Fikaちょこっと事業 事務局
アキコ(仮名):東京都の里親
資格や経験がなくてもできることはある
岡田妙子(NPO法人バディチーム 代表)
東京都では2012年にいわゆる杉並事件が起き、里親さんたち自身も訴えを起こしたことを機に複数の里親支援事業が一気に開始され、そのタイミングでバディチームに訪問型支援の依頼が入り、委託事業となりました。
活動を担っている現場支援者は、性別・年齢・経験・資格の有無を問わず募集しています。事務局コーディネーターが伴走しながら、「みんなで子育て」をビジョンに支援を進めています。
2年前から「制度の狭間」に対する支援も始めた中で、最も多かったのが、正式委託前の長期外泊期間中のご家庭です。他の社会資源が使えず、共働きのご夫婦ではどちらかが1ヶ月ほど休職するような例もある状況となっていて、里親になるためにはこれだけの「苦行」を乗り越えなければならないという、負のメッセージを伝えてしまう恐れがあります。
一方で、この最初の1ヶ月は、その後が順調に行くかどうかのすごく大事な時期ということも言われており、子どもたちが安心できるよう保護者在宅時での保育を基本としています。
東京都の育児家事援助者派遣(里親支援機関事業の一部)
村岡輝彦(NPO法人バディチーム 事務局)
対象は、原則小学生までの委託児童がいる里親家庭です。数年前から、養子縁組成立後も児童福祉司の指導を行っている期間は対象となりました。里親家庭とは、各家庭を担当している里親支援専門相談員を通じて連絡調整をしています。
育児援助の例としては、保護者不在時に自宅や周辺の公園、施設でお預かりします。保育園・幼稚園・学童クラブ、さらに習い事の送り迎えも可能です。
近年、共働きの家庭が増えていますので、仕事の都合や在宅勤務時の利用も増えてきています。また、実子のいる家庭では実子との時間を作りたい、保護者自身の時間やご夫婦だけの時間を設けたいなど、リフレッシュ利用も推奨しています。
家事援助については、保護者の入院や怪我等の利用です。ほか、保護者から中学生の居室の片付けを手伝ってほしいという相談があり、本人の気持ちを聞いた上で、一緒に居室の片付けをする家事援助として、スタートをしたケースもあります。
優里の会のあゆみ
八谷斉(認定NPO法人優里の会 副理事長)
優里の会は2013 年、里親支援をもっと増やしたいということを目的に設立しました。2015 年に熊本県・熊本市から里親制度普及・委託推進事業を、2018 年に熊本県から里親研修事業を、2020 年には八代児童相談所管轄のフォスタリング事業を受託しました。
この間、日本財団より助成を受けて2018 年から新規里親開拓事業、そして2023 年に「くまもと里親Fika ちょこっと事業」を開始しています。
2024 年4 月より、里親支援センターを運営しており、里親制度等普及促進・リクルートから、研修・トレーニング、委託推進、養育支援、自立支援まで包括的な里親養育支援を行っています。
みんなの「ちょこっと」がしあわせをつくる
中村恭子(くまもと里親Fikaちょこっと事業 事務局)
「くまもと里親Fika ちょこっと」は、私たち里親の思いから始まりました。
2022 年・2023 年に行ったニーズ調査において、養育里親では、レスパイトケアに関して利用に戸惑いを感じていること、またどれほど年齢の高い実子であっても、実子とだけの時間が必要であること、などが聞かれました。
養子縁組里親では、小さいお子さんのいるご家庭ではすべて一時的な預かりを必要としていること、また熊本では福田病院や慈恵病院などの民間から委託を受ける特別養子縁組の方も多くいらっしゃるので、縁組成立後もサポートが必要だと感じています。
こうした調査結果から一時預かり制度を構築し、Fika サポーター(イベントサポーター/ちょこっとサポーター)として登録いただいた方々に、イベント時の託児や、一時預かりを担っていただいています。
里親が当たり前の社会になるために、助けてくださる方も助けてもらう方も、みんなの「ちょこっと」がしあわせをつくる、と思っています。
子なし+共働き夫婦が里親になったら
アキコ(仮名:東京都の里親)
里子の養育をして2 年4 ヶ月ほどになります。子育て経験がなく、フルタイムの共働きで、大家さんの2 階に借家住まいです。紹介された当時、里子は1 歳半で、笑顔の可愛い女の子でした。私と里子の年齢差はちょうど50 です。
東京都では概ね4 週間の長期宿泊を経て措置決定となります。この間、保育園や公的な一時預かりなどは基本的に使えません。約1ヶ月、2名のうちどちらかが休みを取るなどをして、必ず子どもを見なければなりません。
週1回2時間ほど、外せない打ち合わせの時間にバディチームに来ていただいて、里子を見てもらいました。3回ほどだったと思いますけれども、大変助かりました。
措置決定すると、子育て経験のない私たちにとっては保育園の先生はとても心強い味方でした。具体的な対応や言葉がけ、成長過程に合わせた遊びを教えていただきました。その他、図書館や、近所の方、習い事で通っている地元の阿波踊りの連でも面倒を見ていただき、商店街でも声をかけていただけるようになりました。
里親ならではの問題も確かにあります。実務的なところでは、支援や補助の利用申請のサポートがあると嬉しいということ。
それから中途養育の問題です。子育て経験のない里親にとっては、何が困りごとなのかよくわからず、子育てはこういうものなのかもしれないと考えてしまいます。試し行動なども、目の前の里子の行動にラベルがついているわけではなく、結果的にうまく対応できたのかわからないまま、課題感は他に移っていってしまいました。
共働きはとにかく時間がありません。里親同士の預け合いもよいと思うのですが、預かる側になれないため気兼ねしてしまいます。少なくとも子どもの小さい今は余裕がないですし、余分な部屋もありません。
里親サロンは1度出ましたが、その後はなんとなく億劫で行っていません。最近になって改めて、同じように生みの親と離れて暮らす子どもどうしの交流になるという側面に目が行きまして、行った方がいいのかなと思い始めているところです。
里子を迎えて私たちが気づいたことは、周りの人、知っている人もそうでない人も含め、人の温かさでした。ただ、これに気づくにも心のゆとりが必要です。課題の解決だけではなくて、ゆとりにつながる支援は全部嬉しいし、ありがたいです。
子育てで困ることはもれなく里親も困っていますので、まずは子育て支援をガンガン進めていただけると嬉しいと思います。
里親も実親も子どもと一緒に手探りで1 日1 日、関係を築いていることに変わりはありません。子どもの思いに真摯に応えながら、解決を焦らず、課題を宙吊りにしながらも、あきらめずにいられるように、お力を貸していただけると、とても嬉しいです。
共働き里親の増加
濱田壮摩(NPO法人バディチーム 理事)
アキコさんの発表に関連して今日、一番強調したいのはこのデータです(下図)。
上の表が平成27年の資料で、下が令和6年の最新のもの。委託されている里親数と、里親の就業状況について示しています。
共働きが約5割になっています。そして単純に5割というだけではなく、増加数に占める割合を見てみると、この間に増えた1500ほどの里親のうち、実に8割以上が共働きだということが読み取れると思います。
平成28 年に「新しい社会的養育ビジョン」が示されて、里親を増やしましょう、という流れになった結果として増えた里親さんは、8割以上が共働きだったということです。施策を考える上でも重要なポイントなのではないかと思います。
クロストーク&質疑応答
【濱田】
里親さん自身からするとレスパイトケアは利用しにくい面があるのでしょうか?
【中村】
「子どもが不安になるからよほどのことがない限り、これは使わないでください」と(支援機関の担当者に)言われた方もいらっしゃるし、里親は自分がなると言ったのだからと、我慢する方もいらっしゃいますね。
【濱田】
所管の地域では「ファミリー・サポート・センター」(ファミサポ)は一般家庭と同様に利用できますか?
【中村】
利用することはできますが、協力会員が足りません。
今、「ちょこっと」の利用は養子縁組里親に限られているのですが、ファミサポと同様に養育里親も使えるよう、児童相談所や各関係機関との協議を進めていきたいと思っています。
【参加者】
共働きの里親委託を進めるために、どんなサポートがあったらよいと思いますか?
【アキコ】
やはり一時預かりが一番大きいですけれども、職場の理解などがもっと進むといいなということもあります。
【Fikaメンバー(熊本県の里親)】
私も一時預かりをしていただけたらありがたいと思った時期があります。
私は共働きと言っても非常勤で、保育園に入れませんでした。なので、自分が仕事の日にどうするか心配がすごくありました。
【村岡】
実際に私も担当したケースで、長期外泊中の一時預かりや、委託後すぐに保育園に入れないケースもありました。オンライン会議の間に2~3時間だけ外に連れ出してほしいというケースや、民間の保育園の一時預かりを利用できたけれども、終了時間に間に合わないので迎えに行ってほしいというケースがありました。
専門職や関係機関の側の理解も
【岡田】
今日はすごくいい取り組みのお話を聴くことができました。
一方で、レスパイトで「子どもが不安になる」という言葉などからは、社会の理解を深めるということと同時に、専門職や関係機関の側の理解も深める必要があるのではないかなと改めて感じました。
ファミサポさんも人手不足の中で、Fikaさんのような「ちょこっと」した地域での支援や、私たちの子育てパートナーや地域の支援員さんでも、とてもいい支援をしてくださる方がいらっしゃいます。
そうした「みんなで子育てする社会」を目指す方向で、進んでいけたらと思います。
今日はどうもありがとうございました。
最後までお読みいただきありがとうございました!
里親家庭に対する支援は全国で模索が続いています。バディチームでは今後もこうした学び合いの場づくりを行い、関係機関のみなさんと手を携えて、行政に対しての働きかけも行っていきます。
※ここでご紹介したのはイベントのほんの一部です。ぜひアーカイブ動画で全編をご覧ください!
※バディチームの里親家庭支援の取組み全体についてはこちらの「バディチームの里親家庭支援」のページをご覧ください。
※このイベントは日本財団より助成を受け、2024年度「里親子に対する理解促進および訪問型支援の強化」事業の一環として開催されました。