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お知らせ 2025.03.13
【他団体・多職種による情報共有・事例検討会】vol.11 NPO法人第3の家族
2024年12月、日本財団の助成事業『訪問型養育支援強化事業』の一つである『他団体・多職種による情報共有・事例検討会』の第11弾を開催しました。
今回お話を伺ったのは、家庭環境問題のはざまで悩む少年少女への支援をされている「NPO法人第3の家族 」代表の奥村春香さんです。事業立ち上げの経緯や活動内容、支援に対する思いなど、詳しくお話をお聞きしました。
奥村 春香(おくむら はるか)さん
NPO法人第3の家族代表。弟の自死をきっかけに活動を始める。LINE株式会社Product Designerを経て、学生時代から続けていた第3の家族を2023年にNPO法人化。
Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023。
グッドデザイン・ニューホープ賞最優秀賞、法政大学理系同窓会成績優秀者など。
家庭環境に悩みを抱える少年少女たちが自分の居場所を見つけられるように
―最初に、「第3の家族」について教えてください。
第3の家族は、「虐待ほどではないけれども」といった家庭環境問題のはざまの少年少女たちが自分の居場所を見つけるためのプラットフォームを運営しています。
主な活動はWeb事業とイベントの開催です。
具体的にはそういった子たちが愚痴を吐き出せるようなサイト「gedokun」と、そこから適切な社会資源や支援を紹介していくサイト「nigeruno」を運営しています。
イベントは、祝日の日の裏に、晴れの日が喜ばしいイベントにならない子たちにとって、裏の居場所となるようなものを開催しています。
―立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか?
私自身もまさに家庭環境問題の狭間のような家庭で育ちまして、虐待ほどではありませんでしたが、父は仕事のストレスや心の病気などが重なる中で、子どもに少し強い言葉を言ってしまうことがある人でした。私はだんだん家に帰らなくなっていったのですが、その中で中学生の弟が自死で亡くなってしまったのです。そのときは私たちに対する支援は何もありませんでしたが、今、悩んでいる子たちのために何かできないかなと思い、大学3年生の頃にこの活動を始めました。
―もともとものづくりがお好きとお聞きしていますが、そのようなこともきっかけになったのでしょうか?
そうですね。一番初めに作ったのがWebサイトの掲示板です。Web開発を勉強していてサイトが作れるようになり、「これを公開したら知らない人と掲示板でやり取りができる。せっかくなら、そういう家庭環境に悩んでいる子たちに届けたい」と思ったのです。
私自身も悩んでいたときに、Xで悩みを投稿して、それが捌け口、逃げ場になっていたことがありました。そのように人と共感し合えたらいいなと思い、最初に「gedokun」を作りました。
―掲示板を始めて子どもたちの声を受け止める中で、活動への思いがどんどん膨らんでいき、法人化したということでしょうか?
当初はNPO法人を立ち上げようとしていたわけではありませんでした。
もともといろいろと作ることが好きなので、掲示板もその延長でしたが、今は自分の中ではこれが一番やりたいことになりました。
一度、LINE株式会社でデザイナーとして働いてはいたのですが、その間にどんどんユーザー数も増えてきて、やはり集まる悩みも深刻ですし、「これは個人のレベルでは留まらないな」と思い、少し勢いもありましたが今は会社を辞めてこの活動をしています。
―周りの方の応援やサポートもあったのでしょうか?
本当にありがたいことにいろいろな人に応援してもらいながら活動できていると思っています。
最初に世に出したのはグッドデザイン賞が新設した新人賞「グッドデザイン・ニューホープ賞」でした。そこで最優秀賞をいただき、審査員の方々が頑張ってほしいと背中を押してくださいました。起業のやり方を教えてくださったり、いろいろな方につないでくださったり、それこそバトンをつなげていただくように今の形になれたと思っています。
グッドデザイン・ニューホープ賞 授賞式 (資料提供:第3の家族)
―グッドデザイン・ニューホープ賞で世に知れたことで、これは必要な事業だと共感してくれる人たちが背中を押してくれたのですね。
そうですね。法人を立ち上げると、近い境遇の人たちが、「私もそうだった」「私も何かやりたいと思っていた」と集まってきてくれました。
掲示板の「gedokun」に投稿していたユーザーの子たちが、「大学受験をして少し親元と距離がとれました」「最近は親の精神疾患が落ち着いてきて少し話せるようになりました」というようなタイミングで手伝いに来てくれています。彼ら、彼女らと、もっとこんなサービスがあったほうがいいよねと話す時間がすごく楽しいなと思っています。
―やはり当事者でもある奥村さんが立ち上げられたという強みと、当事者だからこその理解があるのだと思います。
私たちのサービスは、直接何か支援ができるわけではなく、それこそバディチームさんみたいに実際に家庭へ訪問することはできません。
でも、誰もいない夜や地方に住んでいて誰ともつながりがないなど、どうしようもない状況になったときでも、全国のどこかで悩んでいる子たちが自分と同じような近い悩みを吐き出している空間があることで、「あともう少し生きてみようかな」と思えることが大事だと思うのです。
「あともう少し生きてみよう」という繰り返しの中で、何か少し前を向けるタイミングが来るかもしれないと思っています。
―利用している子どもたちの年齢層や悩みはどんな感じなのでしょうか?
一番多いのは中高生で、年齢の幅だと小学校4年生ぐらいから大学生ぐらいです。少し幅広い年齢層ではありますが、普通に学校にいる子というイメージです。
具体的な悩みとしては、親の厳しい理想に悩む子たちが多いです。
例えば、「この大学に行きなさい」「あなたはこういう進路に行くのよ」というような親が決めつけているケースや、過保護で何から何まで先回りされて、一つ一つ見れば嬉しいことですが、逆に窮屈になってしまうケースです。
他にも、親の離婚や不仲でつらい思いをしている子もいれば、LGBTや精神疾患に対する親の無理解、親との認識のすれ違いに苦しんでいる子たちもいます。
イベントなどで集まると、全員が一見それほど悩みを抱えていそうには見えません。でも、表情の中でも目や口元の感じなどに何かを抱え込んでいるようなものが見受けられますし、話を聞いていくと、いろいろとわかってくることがあります。
見えづらさという点ではとても難しいのですが、そういった「虐待ほどでもないけれども」という子たちが多く利用してくれています。
ただ思いを吐き出す場。寄り添うために、寄り添わない支援
「gedokun」の投稿画面 (資料提供:第3の家族)
―ここからは、Web事業の掲示板「gedokun」について教えてください。
「gedokun」は、家庭環境問題の狭間の少年少女たちが自分の悩みを吐き出すことができる掲示板です。ユーザー登録なども必要なく、ただ思いを吐き出すだけの場です。
投稿される悩みとしては、「つらい、消えたい、しんどい」というしんみりとしたものから、「やってらんない」「夫婦げんかはやめてよ」、というような怒り、「中学受験、やめたいな」など、本当に様々ですね。
これらに対して返信機能などはなく、「わかる」と「エール」という共感のボタンだけで励まし合うというサイトになっています。
この共感ボタンで、「あっ、悩んでいるのは自分一人だけじゃないんだ」「遠くの誰かが応援してくれて嬉しいな」など、孤独感の解消にもなればと思っています。
―返信機能がないことには何か意味があるのでしょうか?
はい。どうしようもないつらい状態で、誰かとわかり合いたい気持ちがあっても、そこで安易に「わかる!私もそういうことがつらくて、なんたらなんたらで…」みたいな感じで言われると「いや、私のことをわかっていないくせに…」というような感情が湧くこともあると思います。
また、自分が思っていない回答が返ってきてしまうと、それが例え優しさだったとしても、自分がつらい状況のときは、それが敵に見えたり嫌なものに見えたりするときがあります。
ですので、こういう問題に関してはつながりすぎることによるリスクもあると感じています。
何年かに1回、女の子同士が一緒に心中してしまうニュースなどを目にします。
やはりそういった危険なつながりも生み出す心配があるので、適度な距離感を大事にしたいと思い、あえて、「寄り添うために、寄り添わない」ということを言っています。
過去に「寄り添う」機能をつけたら「うざい」と言われた。適度な距離感の重要性 (資料提供:第3の家族)
―適度な距離感ですね。つながりすぎない、寄り添わないけれどもつながっているという微妙なラインが安心感にもなるのでしょうね。
「gedokun」には、人に相談できないという子がかなり集まっています。
投稿内容を見ると、「相談とかできないよ」というような投稿が多くありますが「gedokun」への投稿ならできている、というバランスはとれています。
恐らく、「相談したい」「誰かに聞いてほしい」という気持ちはあるけれど、いざそれが対面で人に相談となると、リアクションが怖かったり、そのリアクションを想定して、しっかり言語化しなければと構えてしまったり、そうしたちょっとしたハードルがある子たちがいる中で、「gedokun」の吐き出すだけのプラットフォームというのは一つの支援のやり方かなと思いながら運営しています。
―本当にそうですよね。特に大変な状況にある中では、自分の気持ちを言語化することは難しいことだと思います。
「うまく言葉にできないけど」と言いながら投稿している子もいますし、アンケートを取ると、投稿することで「自分の悩みを整理できた」と答える子も3割ぐらいいるので、少しずつそういった点がクリアになっていくといいなと思います。
オンラインでイベントを開催すると、いつもの投稿の雰囲気とは打って変わって賑やかにみんなで盛り上がっています。日常生活を大きく変えることは難しいけれど、楽しいと思える時間をつくることで、繋ぎ止めることができる命もあるのかなと感じています。
gedokunの不定期オンラインイベント。メタバース空間でチャットで盛り上がる(資料提供:第3の家族)
また、悩みを吐き出すことは大事ですが、ずっとそれだけだとやはり一人なので、心の中に渦巻いてしまうものがあるかもしれません。第3の家族としては、ここは単なる居場所ではなく、次につながるための第三者機関だと考えています。ですから、次の一歩を踏み出すためのちょっとした気付きなどは与えていきたいと思っています。
―次につながるための第三者機関の役割もあるのですね。
投稿内容によって投稿文の下に情報が表示されるのもその一つでしょうか。
はい。今、投稿内容を生成AIで分析しています。例えば虐待や自殺リスクが高いと判定すると、自分が使う手札として児童相談所や希死念慮を抱える人向けの特設ページなどを紹介するようにしています。
その先にあるのがWeb事業でもう一つ運営しているサイト「nigeruno」です。
「gedokun」に吐き出した悩みを、具体的な社会資源を紹介しているサイト「nigeruno」にひも付けるということをしています。
かつて悩んだ人たちからの情報を集めた手札。家か学校だけではない世界を見つけてほしい
「nigeruno」の多様な手札 (資料提供:第3の家族)
―「nigeruno」についてもう少し詳しく教えてください。
「nigeruno」は役に立つ手札をたくさん集めています。
最終的に自分の居場所を見つけてほしいのですが、すぐにたどり着けるわけではありません。
例えば、「自分の居場所はもしかしたら学校に見つかるかもしれない」と思ってもうまくいかなくて、その次は「もしかしたら役所なども頼ったほうがいいかもしれない」と思ったけれどやはりうまくいかなくて、最終的には自分で「アルバイト」をしたらうまくいったというケースがあります。
ただ、人によるとは思いますので、かつて悩んだ人たちが、どのようにして自分の今の居場所や居心地の良い場所にたどり着いたかというのをまとめています。
児童相談所や警察などの公的なものも載っていますが、民間サービスで「最近はシェアハウスだと数万円で住めるよ」「『トビタテ!留学JAPAN』という留学キャンペーンでお金を補助してもらえるよ」といった話もあれば、「ペットが救いでした」「友達のお母さんが助けてくれた」といったソフトな面まで幅広く載せています。
―かつて悩んだ人たちからの情報を基に、手札は多岐にわたっていますね。
意外に盲点だと思ったのは、身近にいるおじさん、おばさん、いとこの存在や、お母さんがダメでもお父さんがいた、というのはあらためての気付きでした。
「お父さん」という手札は「nigeruno」を使ってくれた子の実際の経験談からです。
その子はお母さんとの関係に困っていたのですが、手札をいろいろ見ていたら「お父さん」という手札があって、「あれ、お父さんに相談していなかった」と気づき、お父さんに相談したら、お母さんとの間に入ってくれて関係がだんだん良くなったそうです。
やはりつらい状況になると視野が狭くなりやすいですし、子どもから見るとどうしても家か学校かの世界になりがちですが、いろいろ助けてくれる手札はあります。
「そういう情報をもっと早く知りたかった」という声もかなりありました。
今悩んでいる子たちがなるべく早く生きやすい道をたどれるようにと思い、作ったのが「nigeruno」ですね。
―音楽にすごく励まされたというのもありましたね。
そうですね。YouTubeで「gedokun」と検索するとプレイリストが出てくるので、ぜひ見てほしいです。
音楽やカルチャーなどに共感し、励まされている若者は多いと思います。つらいときの気持ちはなかなか画一的に言葉にできません。そこに寄り添ってくれるアーティストや漫画などのカルチャーはやはり力があると感じています。
―カルチャーに力があるということですね。「知識と情報は最強の装備である」という手札もありました。確かに知識と情報は生きていく上での大きなお守りになると思います。
もう少し生きてみよう、そんな風に思えるイベントを開催
ーイベントについても教えてください。
第3の家族は基本Webなのですが、ハレの日の裏に居場所を作ることを目的に、5月5日の子どもの日には音楽イベント、母の日には「裏母の日」というイベントをやっています。
―「裏」というところが興味深いですね。具体的にはどのような内容なのですか?
子どもの日は、家庭環境に悩んでいる子たちと、かつて生きづらさを抱えたアーティストさんたちを集めてライブを行っています。アーティストさんからパフォーマンスと一緒に励ましの言葉をもらったり、最後は皆で車座になって話す時間も作っています。
パフォーマンス後にアーティストさんが、「自分も学生時代こういうことがあって、でも、いまはこういう理由でこの道に進んでいるんだ」というようなことを話してくれます。
それがとてもいいんですね。少年少女たちが目を輝かせていて、私もそんな顔は初めて見た気がします。悩みの話をしているときには、やはりそんなふうに目を輝かせていることはなかなかないですからね。音楽とアーティストさんの力だと思っています。
母の日は、「裏母の日」と言っています。実は「gedokun」で投稿が増える日の一つが母の日なんです。
母の日は街中が母の日一色になるので、それを見て「自分はこんな状況だけど、お母さんに感謝しなきゃいけないのかなぁ」「友達がお母さんと仲良さそうにしている写真をインスタで見て、いいなって思った」など、葛藤を抱く子もいます。
そのつらい気持ちを解決するのは難しいかもしれませんが、「そのモヤモヤを皆で話そうよ」と、少し重めの話でも皆で笑って話し、賑やかで楽しい会にしています。
子どもたちが抱えている問題は今日1日、この1年ではすぐに解決できないかもしれません。その場しのぎかもしれませんが、「もう死ぬしかない」「生きていても意味がない」ではなく、つらい日常を吹き飛ばして、「もう少し生きてみようかな」と思える楽しい1日を作ることがイベントの大きな目的です。
―「もう少し生きてみようかな」と思えることが重なっていくのはとても大事ですよね。
ここまでやってこられて、最初のスタート時と現時点で、奥村さんの中で何か変わってきたと思うことはありますか?
1つ大きいのは、当事者性というようものがなくなってきたということです。
最初は「gedokun」を自分で作っておきながら、その重さに投稿を見るのがつらいときがありました。でも活動を続けていく時間の中で、自分の整理もついたのでしょうか。
今は一つ一つの投稿をしっかりと読めていて、読んでつらくなることはありません。そこは自分が場数を重ねたということもあり、経験と切り分けて考えられるようになったのだと思います。
そうなれたときにモチベーションにも変化がありました。それこそ最初は自分のことがきっかけではありましたが、今はそれよりも少年少女たちのことが好きで、尖りもあれば揺らぎもある彼ら彼女らと一緒に歩みながら、このどうしようもない現状をなんとかしていきたいという気持ちが大きくなりました。
―少年少女たちが好き、と言い切る奥村さんはとても素敵です!
gedokunを多様な悩みを吐き出せる裏の居場所にしていきたい
―活動もどんどん広がってきていると思いますが、次に目指すところや目標などはありますか?
まず直近の目標としては、第3の家族を少年少女たちにとっての「裏の居場所」にしていきたいなと思っています。
今、「gedokun」は家族バージョンだけですが、「gedokun」というプラットフォームの中で学校、LGBT、不登校などの悩みを分岐させて、少年少女たちの裏の居場所みたいなものを作ってあげたいと思っています。
今までも学校の「裏掲示板」はありましたし、トー横などもそれに近いと思いますが、若者にとってややアンダーグラウンドな居場所みたいなものを大きく構え、その中で、先程の「nigeruno」の機能を引き続き行いながら、適切な社会資源につなげていくことをやっていきたいです。
ただサービスを広げたいという思いではありません。若者の悩みは複雑に絡まっています。
例えば、学校で友達と喧嘩したという悩みの背景には、親から威圧的な態度を取られていて、そういうコミュニケーション方法しか知らない場合もありますし、LGBTの問題も学校と家の両方にまたがってくる悩みです。そうなったときに、今「gedokun」は家の悩みしか投稿できないので、その制限は大人の事情だと思ってしまいました。
嫌なことはたくさんあります。学校の悩みの方が投稿のハードルが低いかもしれませんので、それをきっかけにもう少し深い話ができるようなフローを考えています。
―吐き出す場の中に、「学校」という枠組みもきっと必要なのでしょうね。
私たちも訪問型支援をしている中で、虐待ではないですが、生きづらいだろうなと思う子たちに出会います。あらためてそういう子どもたちも第3の家族とつながってもらえたらいいなと思いました。
奥村さんから、私たちのような訪問型支援に期待することはありますか?
訪問型支援は全国のどの家庭でも行ってほしいとずっと思っています。
今は核家族化が進み、地域のつながりも減り、親子だけの子育てになっていることで、こうした狭間の問題が起こっているのだと思います。
親の教育が厳しくて、「お前の成績は駄目だ」と言われても、昔だったら第三者の隣のおじさんのような人から、「○○ちゃん、すごい頑張ってて、頭いいじゃん!」というように褒めてもらえたら、恐らくそれだけで認められた、報われた部分もあったはずなのです。
それが今は社会の構造的になくなってしまっています。
今ではそういったおじさんが話しかけてきたら通報されたり、おせっかいなことをするなと言われてしまうかもしれません。
ですから、もう制度化をして同じようなことをするというのは、もしかしたら日本には合っているのではないかと個人的には思っています。
私自身、昔は社宅に住んでいたので、父の会社の上司の奥さんでおせっかいなおばさんが家に来てくれて、ご飯を出してくれたり、私のことを褒めてくれたことがありました。
その当時は、褒めてもらったことが大きく印象に残ってはいませんでしたが、でも、このちょっとしたことが、ある種、親への抑止力になっていたと思います。
その社宅から引っ越した後は、怒鳴り声なども本当に悪化してしまいましたので。そういう点でも第三者が家庭の中に入ってほしいと思っています。
―そうですよね。昔はいろいろな人が周りにいて、地域の子育て力が自然にありました。それが難しくなった今は仕組みを作り、制度化しながらでも、いろいろな大人が子育てに関わることが必要だと思って私たちも活動しています。
「親ガチャ」という言葉がはやらない世界へ
ー最後になりますが、活動への思いや、この先こんな社会になったらいいなというようなことがあればお聞かせください。
第3の家族としても考えているのが、家でいろいろあっても何とかなる社会になってほしいということです。
それは「親ガチャ」のような言葉がはやらない世界です。「親ガチャ」という言葉が若者に支持されるのも、生まれによる差が大きいと思われているからではないでしょうか。
実際、今はその通りで、奨学金も進路の決定なども、親がどう判断するかで左右されてしまいます。親がもしかしたら精神疾患を抱えているなど、そういう課題もあるかもしれません。
第三者も関わって支え合いながら、子どもにとってのよりよい人生が選択されていく、なんだかんだで生きていけるような社会になればいいなと思います。
―奥村さん、貴重なお話をありがとうございました。
お話をお聞きし、サイトも拝見した中で、「虐待ほどではないけれども」という子どもたちが本当に多いことを痛感しました。
親の厳しい理想や過干渉、無理解という親側の問題があることもわかりました。
ただ奥村さんは、親自身も同じように抑圧的な環境にいたり、虐待を受けてきたという理由があり、「親が悪いわけではなく、社会全体の問題や課題である」ということをいろいろなところで打ち出されています。それは私たちも同じ思いですし、心から共感いたしました。
多くの方に、第3の家族の活動を注目していただきたいと思います。
これからもますますのご活援を応援しております。