特定非営利活動法人バディチーム
インタビュー 2023.03.16

【他団体・多職種による情報共有・事例検討会】vol.5 地域活動支援センターふれあい

2023年2月14日(火)、日本財団の助成事業『訪問型養育支援強化事業』の一つである『他団体・多職種による情報共有・事例検討会』の第五弾を開催しました。

 

みなさんは「地域活動支援センター」をご存じですか?

 

地域活動支援センターとは、障害者総合支援法の規定に基づき、地域で生活をする障害(身体・精神・知的)のある方の日常生活や社会生活をサポートする支援機関の一つです。主に創作的な活動や生産活動の機会の提供、地域社会との交流の促進などを実施しています。

 

この助成事業を通して私たちは地域活動支援センターを利用されている親子に出会い、地域活動支援センターの活動や支援内容、関係機関との連携について関心を持ちました。

 

そこで、今回は東京都渋谷区にある社会福祉法人 ふれあい福祉協会 地域活動支援センターふれあい センター長の長嶋美紀さんに詳しくお話を伺いました。

 

心の病を抱える方やその家族が地域で安心して生活できるために

―最初に「ふれあい」について教えていただけますでしょうか?

 

ここは地域活動支援センターになります。あまり聞いたことがない、あるいは初めて聞くといった方が多いかもしれませんが、だいたいどこの市区町村にも1、2箇所は設置されています。

市区町村によってサービスは若干異なりますが、私たちふれあいでは渋谷区在住で現在精神科に通院中で比較的病状が落ち着いている方とその家族の方を対象に、相談支援や情報提供、利用者同士の交流の場、生活の実践に役立つ様々なプログラムを提供しています。

原則、登録制で、最長2年間の年度更新の契約になります。

登録や相談、交流室やパソコンの利用は無料です。一部、実費負担がかかるものもあります。

 

―利用される方はどんな経緯でこちらにいらっしゃるのですか?

 

一つは区の障害者福祉課からの紹介です。窓口に相談にきた方に日中活動ができる場として紹介していただいています。ご自分でネット検索をしてこちらにいらっしゃる方もいます。

あとは病院からのご紹介もありますね。

 

―病院からの紹介もあるとのことですが、医療機関との連携やつながりが前提としてあるのでしょうか。

 

こちらは心の病を抱えている方が対象ですので、登録時には主治医の先生から「診療情報提供書」を提供していただき、「こういう方ですよ。こういう面が心配です。ここを見ていただきたいです」というところを書いていただいています。

 

―その後、主治医の先生への定期的な報告はされるのですか?

 

定期的に報告することはありませんが、元々病院と連携していくことは利用者に了解を取っているので、心配な様子が見られた時は私たちから先生に相談することもあります。

また、病院はどうしても診療時間が短いため、時間内でご自分の今の状態をうまく説明できない方もいらっしゃいます。そういう方には通院する前に私たちから主治医にご説明をしています。

 

―利用者の年齢層や年齢制限はありますか?

 

年代は一番若い方で20代、一番上の方は70代まで幅広くいらっしゃいます。

年齢制限は特にありません。ただ未成年の方は児童の支援機関がありますので、まずはそちらに行かれると思います。今のところ20歳より若い方はいらっしゃいません。

 

病気についての心配や生活全般の困りごとを相談できる。利用者同士の交流も

―主に、どんなことをされているのでしょうか?

 

地域で生活していてお困りの方にお電話で相談を承ったり、実際にこちらに来ていただいてお悩み事のお話を聞いたりしています。それに加えて、ご不安のある方には訪問をしたり、必要に応じて地区担当の保健師と連携して支援をしています。お一人での通院が難しい方の通院同行や、年金手帳を取得したいのですが年金事務所に一人で行くのは少し怖いという方の同行もしています。

 

現在約80名の方が登録しているのですが、実際こちらに来社されて利用する方はその半数ぐらいです。

精神障害の方は実際に外出が難しい方もいますのでお電話での相談も多いです。

相談内容も多岐にわたっていて、幻聴が聞こえたときに「これは幻聴ですよね」と確認のお電話をしてくる方もいますし、「寂しくなったから」というお電話もあります。

 

日常生活の相談も承っていますので、ささいな相談もあります。例えば「今、台所を綺麗にしようと思っているのですが、どのような洗剤がいいですか?」、「こたつを買うにはどこで探したらいいですか?」というようなものです。

お仕事をされている方ですと、「今、仕事の休憩中です。午後からまた仕事を頑張っていきたいと思うので応援してください」というお電話もありました。

 

相談内容の決まりごとは特にないのですが、専門的なことで私たちよりもっと専門的に応じるところがあればそこをご案内しています。何でもいいから気軽にお電話ください、ということをお伝えしています。

 

―台所洗剤のことなど、生活のちょっとした相談もできるのは安心ですね。

お電話はいつかけてきても良いのですか?

 

午前10時から夕方6時まで開所していますが、時間制限はあります。1日にお電話ができる時間は20分以内と決まっています。

 

―なるほど。ある程度時間制限を作らないと、皆さんきっと延々と話してしまいますよね。

 

ただ、どうしてもお気持ちの中でその時間で収まらない方もいるので、そこを時間だからと区切ることはできません。そういった方には1時間ほどお話を聞いたり、20分して一旦切って、しばらくしてからまたかけてくる方もいます。

今、お気持ちが大変な方には出来る限り対応するようにしています。

 

―利用者同士の交流もありますか?

 

交流する機会として様々なプログラムの提供をしています。毎月、月初に今月行うプログラムを交流室のホワイトボードに貼っています。自分が参加したいプログラムがあれば自由にお名前を書いて予約をしてもらっています。

現在8つのプログラムを実施していまして、初心者でも取り組みやすいかんたんな刺繍や身体を動かすストレッチ体操、交通機関を利用した散歩等のプログラムがあります。散歩では先日は東京都美術館に行きました。

 

平日は作業所に通っている方も多いので、作業所がお休みの日の日曜日の午後に集まってきて、プログラムがない時にはトランプやゲームなどをして交流を深めている方もいます。

あまり交流がお好きでない方や負担になる方は、平日の比較的来所が少ない時間帯にお一人でいらっしゃって読書をしたり、テレビを見たり、新聞を読んだりして過ごしている方もいます。

 

―利用者の中には子育て中の方もいらっしゃいますか?

 

ケースとしては少ないですがいらっしゃいます。お母さん自身に精神障害があり子育てが厳しい、でもご主人に障害の理解があまりないので困っている、というような例もあります。

ただ、残念ながらこちらのような施設をご存じない方が多いです。先日も渋谷区のある機関からのご紹介で見学にいらした母子がいたのですが、状況やお困りごとをお聞きする中で、もう少し早く私たちとつながっていたらお子さんにもっと良い支援ができたかもしれないと思うことがありました。

 

職員の中では前職で母子生活支援施設にいた者もおりますし、私自身も他の区の児童発達支援センターで相談員をしておりました。これまで子ども家庭支援センターや地区担当の保健師、保育園などと連携してきた実績がありますので、もっとその経験を生かしていければと思っています。

 

―登録期間は2年とのことですが、皆さん更新をされるのでしょうか?

 

ほとんどの方が更新されています。まれに更新されない例としては、就職されてお仕事もできるようになり「自分にも自信がついてきたので一旦卒業させていただきます」といってここを卒業する方もいらっしゃいます。

残念なことに病状が重くなってしまい、ご家族から「今は負担を避けたいので、一旦更新は取り止めて、また退院して必要になったら登録したいです」ということもありました。

更新の時期には担当から連絡を取り、確認をしています。

 

―中にはなかなか連絡がつかなくなる方もいらっしゃるのではないですか?

 

やはりどうしてもお電話に出ていただけない方もいますし、入院されたという方もいます。お電話に出ない方にはお手紙を差し上げたり、関係機関と連携しながら、訪問看護が入っている場合にはそちらに連絡して状況確認をすることもあります。

 

精神障害を一括りにまとめない。個々の抱える課題を柔軟に対応

―何とかして安否の確認はされるのですね。すごくきめ細かな対応をされていますが、職員の方々は大変ではありませんか?

 

そうですね。でも、いろいろなことを柔軟に対応できる職員たちだと思っています。利用者は年齢層も幅広く、抱えている課題も違います。精神障害といっても様々で、一括りに精神障害とまとめられるものではありません。統合失調症の方の中にもいろいろなパターンがありますので、オールマイティにいろいろな知識をもって会話できるように勉強しています。

ピアサポーターの職員もおりまして、非常勤職員として入職し、当事者として当事者の相談に対応をしてもらっています。

 

―ピアサポーターもいらっしゃるのですね!当事者だからこそわかることもありますし、相談する側も話しやすさがあるのではないでしょうか。どんな形で関わっていらっしゃるのですか?

 

今は週3日の勤務です。例えばお電話で「ピアサポーターの方とお話ししたいです」というご相談があったらサポーターにお電話を代わってもらいます。来所してピアサポーターに相談したいという方はここで面談をしてもらいます。

4月からはピアのプログラムを開始しますので、当事者だけのプログラムをピアサポーターも入って話し合っていこうと思っています。

 

―支援をされている中で特に難しさを感じる点はありますか?

 

基本的に楽なケースはないのですが、やはりお一人で問題を抱えてしまう方は心配です。ご相談していただけると良いのですが、ご相談し慣れていない方で、私たちが入る前に閉ざされてしまいますと支援が難しくなりますのでその点は困難さを感じます。

一旦、私たちとつながればいろいろな支援を一緒に考えていけますので、相談できる癖をつけてもらいたいですね。わがままでも何でもいいから困ったらすぐ相談、と思ってもらえたらと思います。

 

―わがままでも何でもいいから困ったら相談してほしいというお言葉に、利用者に対してのあたたかいお気持ちが伝わってきました。ありがとうございます。

 

社会資源の掘り起こしは私たちの使命

ーここからは関係機関との連携などについて教えてください。

日ごろから様々な社会資源を調べて、そこにつなげたり、ご相談されているのでしょうか?

 

そうですね。社会資源の掘り起こしというのは私たちの使命だと思っています。

ただ、その方に合わせた社会資源を提供できるように頑張ってはいますが、なかなか難しい点もあります。

一つの問題が起きたとき、すぐにその方に合う相談先やサービスを見つけられると良いのですが、公的な制度の利用をするためには時間がかかることがあり、必要な支援を提供できなくなってしまうことが課題だと思っています。

 

利用者の年代や属性でも様々な難しさがあります。ここの利用者は比較的年代の高い方が多いので、若い方から「ここではなく、もっと他に気軽に話せるところはないですか?」と言われると「少し待ってくださいね」となりまして、すぐに答えが見つからないことがあります。

 

―利用者の年代や属性によっても必要な支援は違いますし、その人のニーズにマッチするものを探す難しさがあるのですね。

そんな中で現在、バディチームがふれあいさんからのご紹介の家庭に訪問させていただいていますが、バディチームにつなげようと思われたきっかけや理由は何だったのでしょうか?

 

いろいろ調べた中で、渋谷区独自の制度は使いたくても制限があるから使えない「制度の壁」がありました。ただ、バディチームはそういったものを全部取っ払ってスッと支援に入っていただけるというところでしょうか。利便性が良いのが一番ですね。

 

―ありがとうございます。それが民間の強みですし、見つけてくださって嬉しいです。

 

お母さんの利用者が少ないので、子育て世帯に対しての支援はまだ力が弱いと思っています。今回のバディチームとつながったケースを通して、今後は子ども家庭支援センターなどの関係機関とも相談していけるかなと思います。

 

―これまでのご経験から制度や支援について、こうだったらいいなと思うことはありますか?

 

何か制度やサービスを使うにあたり敷居を低くしてほしいです。入り口が簡単ですと、利用していただきたい方にご案内する時に説明しやすいですし、実際に入ってもらいやすいと感じます。

障害のある方に「こういうサービスがあるのですが、始めにこれをやって、これをやって、これをやって…」と言うと、「もういいです」となってしまいます。わかりやすく、簡単に使えると良いですね。

 

ふれあいをお守りのような存在や気軽に相談できる居場所として利用してほしい

―本当にそうですね。支援が必要としている人なのに、手続きの段階でこぼれ落ちてしまったら何のための支援なのかと思いますね。

それでは最後に、ふれあいについての思いやメッセージをお願いします。

 

たくさんの方にふれあいを知っていただきたいと思っています。何かがあった時に相談する先として、ここがあるだけでも心強いのではないかと思います。

登録をしていても普段、全くここを使っていない方も多いですし、「お守りみたいな存在で、何かあったらここを使えばいい」ということで安心されている方もいます。

実際に全く来所もされず、電話もなしで、更新確認の時のやりとりだけで、「また2年間の更新をお願いします」という方もいるので、そういった存在でも十分だと思っています。

いつでも気軽に相談出来る居場所の一つとして、ふれあいを皆さんに利用して頂ければと思っています。

 

―私たちも多くの方に知っていただきたいと思います。ふれあいのような地域活動支援センターがもっと知られていくことで、障害がある方の支援先の選択肢が増え、利用をする人やそのご家族にとって大きな安心感にもつながるのではないでしょうか。

長嶋さん、このたびは貴重なお話をありがとうございました。

 

 

※資料提供:地域活動支援センターふれあい

 

地域活動支援センターふれあい 

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▼日本財団助成事業『訪問型養育支援強化事業』についてはこちらのページをご覧ください。

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