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【イベントレポート】小さな居場所で親子を支えるためのトーク&ミーティング~非施設型ショートステイ/トワイライトステイの可能性~

2025年1月29日、オンラインイベント「小さな居場所で親子を支えるためのトーク&ミーティング~非施設型ショートステイ/トワイライトステイの可能性~」を開催しました。

 

こども家庭庁が推進する子育て支援の中でも重点施策となっている「子育て短期支援事業(ショートステイ・トワイライトステイ)」。

児童養護施設をはじめとする「施設」だけでなく、一般の地域住民が担う「協力家庭」、さらに里親・ファミリーホームもその担い手として焦点が当てられていますが、この他にも、さまざまなルーツをもつ中小規模の事業者による実践も、各地で始められています。

そうした「非施設型」の民間団体によるそれぞれの実践について情報交換を行いました。

全国から60名以上が参加した当日のもようをレポートとしてお届けします。   

 

※ここにご紹介するのはイベントのほんの一部です。ぜひアーカイブ動画で全編もご覧ください!

 

 

■出演者

岡田妙子:NPO法人バディチーム 代表

濱田壮摩:NPO法人バディチーム 理事

大山留美:NPO法人バディチーム 事務局コーディネーター

上田馨一:一般社団法人merry attic 代表理事

海老瀬優:一般社団法人merry attic メリーアティックボンド 主任

藤田琴子:一般社団法人 青草の原 代表理事

小さな居場所「ばうむ」

岡田妙子(NPO法人バディチーム 代表)

 

17年間、家庭訪問型支援を一筋にやってきましたが、昨年6月より居場所事業を始めました。

 

2つの種類があり、その1つは事務局のある新宿区の協力家庭としての活動です。

新宿区は地域住民による協力家庭の取組みが非常に進んでいます。そして、地域の子育て支援団体が協力家庭として登録できることになっており、複数の団体が登録しています。バディチームはトワイライトステイから始めました。

 

もう1つが「アウトリーチ連動型 親子に寄り添う小さな居場所事業」です。訪問型支援を継続していく中で築いた信頼関係をもとに、親子が安心して一時的に離れられる場を提供します。

既に知っている支援者がいる安心感のもと、温かい手作りの食事を食べることや、清潔な室内環境を知ることで、子どもの経験値を上げること。また親にとっても、人を頼ることを知ってもらい、他の支援につながりやすくなることを目的としました。

 

ショートステイの受け皿が不足している中で、協力家庭や小さな居場所であれば始められるかもと思われる方にとって、私たちの「ばうむ」がそのモデルになればと思っています。

 

訪問型支援との連携と、小規模であることの意義

大山留美(NPO法人バディチーム 事務局コーディネーター)

 

事務局近くのマンションの、1LDK の一室を借りて実施しています。

今年度は、以前行政から依頼があって訪問支援をしていたものの、現在は支援が終了してしまっている家庭を対象としています。

 

 

訪問支援をしていたことで、家庭の部屋の中も、親子の事情もわかった上で支援ができるという点で、細かな気遣いができていると思います。

小規模で1 日1 組なので、普段は我慢しているだろう子どもたちの希望を通してあげやすいという面もあります。

また送り迎えをすることで、一緒に歩いているその最中に子どもの気持ちや本音を聞くことができる、ということもありました。

 

目指すのは「こどもショートステイの社会インフラ化」

上田馨一(一般社団法人merry attic 代表理事)

 

学童や放課後の居場所づくりの事業を行う中で、子育てをされている方々の時間的・精神的なゆとりの不足を非常に強く感じました。

「子育て社会を頼れる空気感で満たしていく」という言葉のもと、児童養護施設のような本体施設を伴わない、専用の戸建てを借りて運営する「独立型こどもショートステイ」を京都市でスタートしました。

現在、1 年間で延べ利用人数が1600 人程度という状況です。

 

ショートステイが担う大きな価値は2 つあると感じています。

1 つ目は一般家庭が要支援/要保護家庭になるのを防ぐこと。そのためには、大変な家庭が利用する場所だといった認知をされないように、そして子どもがまた来たいと思えるような場所にすることが必要です。

そしてもう1 つは、要支援/要保護家庭の抱える虐待リスクを軽減すること。そのためには親に対する支援や、専門性のある人材を確保することが必要になります。

 

子育て支援全体の供給量が足りていない中で、こどもショートステイは当たり前の選択肢になりうる、素晴らしい事業だと思っています。

 

メリーアティックボンドでの子ども・親への支援

海老瀬優(メリーアティックボンド 主任)

 

一軒家を借りてショートステイ事業を行っていますが、見学に来られた方が「友だちの家に遊びに行くみたいでいいな」とお話されるくらい「普通の家」で、子どもたちは楽しく賑やかに過ごしています。

 

保護者支援では、雑談支援というものを行っています。送り迎えのときに日々の悩みや、嬉しかったことをお話していただいています。

自宅から駅が遠いなどの理由で今まで他のショートステイの利用が難しかった方には、送迎の支援も行っています。

 

 

親も子もお互いに大切だからこそちょっとだけ離れて自分の息が整えられるような、そんなショートステイが当たり前にある社会になればと思っています。

 

れもんハウスがめざす「あなたでアルこと ともにイルこと」

藤田琴子(一般社団法人 青草の原 代表理事)

 

私はもともと母子生活支援施設で働いていました。いろいろな事情のある親子が暮らしていましたが、子どもが「少し距離を置きたいな」というとき、また親の方も自分しか大人がいないということで行き詰まってしまうとき、少し離れる、少し自分の時間を大切に使うことができる場所が必要だと思っていました。

 

施設の近くに見つけた一軒家で、「れもんハウス」が2021 年の11 月からスタートしました。

親子だけではなく、いろいろな背景の、困ってる人も困っていない人も集うような場所になっています。

 

宿泊もとくに対象を限定していませんが、「れもん留学」と呼んでいるこの取組みの中で、新宿区の協力家庭としてショートステイを行っています。

 

ショートステイでは、区の協力家庭に登録したボランティアメンバーがシフトを組んでれもんハウスで子どもと過ごします。

れもんハウスが区内にあるので登録するメンバーは区民でなくてもよく、今は専門職だけでなく普段事務やIT関係の仕事をしている人など40~50人のメンバーでチームを組んでいます。

委託費から、シフト調整のためのコーディネーター費用も出しています。

 

 

親も子どもも、ショートステイ以外のときにも遊びに来るようになったり、そういった具体的に関わっていく人が増えていくことは、地域にとってもセーフティーネットの選択肢を増やすことになっていくのではないかなと思います。

 

親子ショートステイも2023 年度から始めています。

親と離れることが不安な子どもにとっても一緒に来れることはメリットになりますし、親にとっても、子どもが寝た後にみんなで話す時間が大事な時間になっています。ケースワークの面でも、夜から朝にかけての親子のようすが見られるというのは、いい面かなと思います。

 

全国でも子ども食堂ですとか居場所が広がっていく中で、そこでもショートステイが受け入れられるようになっていく、そんな未来が当たり前になっていったらいいな、という期待を持っています。

 

多様化する担い手と、その「調整役」

濱田壮摩(NPO法人バディチーム 理事)

 

ショートステイの担い手が増える中で、自治体との間に調整業務というものが発生し、そこに予算がかかる、あるいはかけるべきなのだろうと思います。

 

 

家庭の要支援の程度であったり、利用の理由であったり、あるいは地域にどういう資源があるかによって、担い手をどういう組み合わせで活用し、どこに予算を使うかということを、自治体さんそれぞれに工夫していただけるとうれしいなと思います。

 

クロストーク&質疑応答

【参加者】

単身で住んでいて、そこを日頃は居場所として運営している場合は泊まりや深夜帯の受け入れができないということで、市の方となかなか協議が進みません。

 

【藤田】

自治体も前例がないとなかなか始められない面があると思うので、新宿ではこういうのをやってるらしいですよ、ということを伝えてもらったり、地域で他にやってらっしゃる方々にも声をかけて一緒にアプローチしていくということもできるのかなと思います。

 

【参加者】

親のレスパイトや入院以外に、家出をして居場所がない中高生の受け入れはありますか?

 

【上田】

現状は2~12歳までの受入れですが、今後、365日かつ18歳までを対象にしたショートステイを行っていこうという可能性がある中で、中高生の利用に対しての設置基準であったり、どういう専門性があったらいいのかというところは、自治体の方々とも論点になっているという状況です。

 

【藤田】

実際にショートステイの枠で受入れたことのあるのは中学生までです。

ただ、制度に当たらない「れもん留学」で受け入れたり、親とも連絡をとりたくないというケースで弁護士さんが間に入って、一時保護委託になったケースもあります。

 

【参加者】

専従人員配置支援の6,497千円の3分の1は市町村が負担しなければならず、市町村としては単価契約にしたがります。どのように提案されたのでしょうか?

 

【上田】

メリーアティックボンドは専従人員配置支援を委託費としていただいていますが、開所日数に応じて按分された額になっています。

それをいただくことでどれだけ受入人数を増やすことが期待できるのかといったところを定量的にお伝えすることはやはり大事だなと思っています。

 

【濱田】

ショートステイには「つなぎ」の機能もあると思います。利用された方を別のサービスにつなげた事例はありますか?

 

【藤田】

例えば外国ルーツを持つ人たちの居場所づくりをしている方がれもんハウスにたまたまいて、その居場所にも行くようになるとか、ショートステイ期間中に子ども食堂の情報を知って、親子で行くようになるとか、地域の社会資源とつながることはよくあります。

 

【上田】

私たちが主体となって他のサービスにつなげる事例は多くありませんが、その役割として自治体のケースワーカーさんがいらっしゃるので、そういった方々に対して、ご家庭の状況をしっかりアセスメントして伝えていくということは、重点を置いて運営しています。

小さな居場所なら始められる

【岡田】

今日は本当にたくさんの方にご参加いただきましてありがとうございました。

私たちはまだ始めたばかりの「よちよち歩き」ではありますが、やはり親子にとってちょっと離れられる、いろんな形の居場所が社会に広がるように、皆さんとともに頑張っていきたいと思います。

 


 

最後までお読みいただきありがとうございました!

協力家庭、里親、また今回の3団体のような中小規模の事業者など、多様な担い手によるショートステイ/トワイライトステイの取組みは全国で模索が続いています。バディチームでは今後もこうした学び合いの場づくりを行い、関係機関のみなさんと手を携えて、行政に対しての働きかけも行っていきます。

 

※ここでご紹介したのはイベントのほんの一部です。ぜひアーカイブ動画で全編もご覧ください!

 

 

 

このイベントは、こどもの未来応援基金の支援を受けて実施しました。

 

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