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お知らせ 2025.04.14
【出張講座レポート】世田谷区 おでかけひろば@あみーご
バディチームでは今年度、日本財団より助成を受けて「里親子に対する理解促進および訪問型支援の強化」事業が進行中。
その一環として、保育・教育・子育て支援に従事する職員の方々を対象に、里親子への具体的な配慮や対応についてお伝えする出張講座に取り組んでいます。
2025年1月22日(水)、世田谷区にある「おでかけひろば@あみーご」さんで開催した出張講座のもようをレポートします!
おでかけひろば @あみーご
東急世田谷線・松原駅から徒歩6分ほどの場所にある「おでかけひろば@あみーご」。
乳幼児のお子さんと保護者が交流したり、情報交換したり、また「地域子育て支援コーディネーター」さんが相談に乗ってくれたりします。
運営するのはNPO法人子育て支援グループamigo。
今回はamigoさんが運営するもう1つの拠点「おでかけひろばULALA」も合同で、21名の職員のみなさんにご参加いただきました。
里親制度について
今回は世田谷区のフォスタリング機関(里親養育包括支援機関)である「フォスターホームサポートセンターともがき」さんとの協働開催。
まずは副センター長の岩田祐一郎さんから、里親制度についてお話をしていただきました。
養育家庭は養子縁組とは違い戸籍上の親子関係とはならないこと。
ひろばを利用する0~1才の子どもを委託されることが多いのは養子縁組の里親であること。その背景には、若年の妊娠や孤立した状態での出産などが多いこと。
里親の認定要件については、とくに資格は必要なく、子どものための部屋と、子どもの最善の福祉に対する理解がポイントで、つまり里親さんたちは必ずしも「プロフェッショナル」ではなく「普通」の人たちであることをお話しいただきました。
▼制度や要件について詳しくはこちらをご覧ください!
また、ひろばの職員さんが果たしうる、里親家庭の理解者というだけにとどまらない役割について。
子どもたちが児童養護施設や里親家庭で暮らすことを「社会的養護」といいますが、それ以外も含めたすべての子どもたちを対象とするのが「社会的養育」という考え方です。
ふだん接している子どもが、いつか思わぬことから社会的養護が必要になるかもしれない。
そうしたときに、実親のことも知っている地域の方々が、子どもに対してできることがあるかもしれません。
例えば、「お母さんと初めてここに来た時、こんなふうに過ごしてたよ」「お母さん、こんなふうに見ててくれてたよ」という親子の歴史を知っている人がいるということ。
それは、措置によって生みの家を離れ、途切れてしまった子どもの人生を「つなぐ」役割を担っていただけるかもしれない、ということです。
もちろん親子が危機的な状況にならないための子育て支援であり、少ないことではあるかもしれませんが、そうした役割の重要性を強調されていたのが印象的でした。
どんな子どもが里親家庭で育つことになるか?についても具体的にお話しいだきました。
(複数のエピソードを組み合わせて加工した架空の事例です)
【小学3年の男の子】
実母が精神疾患により子育てが困難な状態となったため、子ども自身が自分の身の回りのことをできるようになる小学校卒業までをめやすに里親委託。
自身が頑張って母親を支えていた部分もあり、子どもらしい甘えが出てきたらそれを受容していただくことも里親さんに依頼。
【高校1年生の女の子】
実親からの暴言・暴力があり、自身で児童相談所にSOSを出したことをきっかけに、高校卒業までの委託。通学先を変えずに部活を継続し、卒業後の自立に向けたサポートを里親さんに依頼。
離れた場所にある施設への措置になると転校を余儀なくされることもあり、子どもの生活の継続性を守るためにも、地域の中に多くの里親さんが必要なのです。
里親さんの生の声
続いては、実際の里親さんの声です。
バディチームが2023年6月に開催したオンラインイベントのアーカイブ動画から、出演された里親さんのお話をみなさんに観ていただきました。
▼ オンラインイベント
里親家庭の親子を地域で支えるためのトーク&ミーティング~従事者むけ意識調査と当事者の声から~
▼ アーカイブ動画の全編はこちら
(32:05付近から里親さんのお話がご覧いただけます)
里親になったきっかけや暮らしの中での嬉しかったエピソードもご紹介いただきながら、「もっと理解が広がるといいなと思うのはどんな場面か」についてお話をいただいています。
公共機関での手続きの場面や、医療機関で保険証ではなく「受診券」を利用すること、また小学校での入学式でお子さんの姓を戸籍名と通称名のどちらを利用するかということ。
また子育てひろばや発達支援の機関などで、出生体重や出生週数、歩き始めた時期、しゃべり始めた時期を質問される場面が多いこと、など。
反対に、他の里親さんのケースも含めて「こういう対応をしてもらって助かった」というお話も。
小学校での「2分の1成人式」では、みんなの前で発表するという形式ではなく、お手紙を書いて親御さんに渡す形式にしてくれた先生がいたこと。
保育園や幼稚園で、幼少期からの写真を集めてアルバムを制作することになったとき、「私も3才のものしかないからあなたも同じでいいよ」と言ってくれたママ友がいたこと。
そして最後にメッセージをいただいています。
一般家庭も子育てはとても大変。そんなに特別扱いしていただかなくても、、本当に普通に接していただきたいのです。
ただ、幼少期のことを知らないということや、あとは一番感じるのが、里子さんにはもちろん実親さんがいるので、私たち里親に遠慮して話さないことが割と多いのです。
それを保育園の先生や学校の先生が少し拾ってもらって、私たちに伝えてもらえると、何を考えていたのか、どんな考え方をしていたのかを知ることにもつながります。
その辺りは時々、気遣っていただき、声をかけてもらえると、嬉しいなと思います。
ぜひ動画もご覧ください!
ワーク ー「よく使う声かけ」から考える
後半はワークです。
赤ちゃん連れの親子が初めての利用で訪れている場面を想定して、そうした場面で「よく使う声かけ」から、相手が里親子だったら?を想像していただきました。
- お住まいはお近くですか?
- 他のひろばや児童館にお出かけしていますか?
- (@あみーご/ULALA)はどのように知ったのですか?
などが多く挙げられた「よく使う声かけ」で、その多くは、相手が里親子だとしてもとくに困惑させるとは考えにくいものでした。
つまり、「普通でよい」ということ。
職員のみなさんの普段通りの対応をしていただければ、特別扱いが必要なわけではないということが、この講座の答え合わせ、その一部、ということになります。
では残りの部分はというと。
少し親子を困惑させるかもしれない声かけもありました。
- お子さんの名付けエピソードについて(名前の由来)
- 出産はこのあたりでされましたか?
- きょうだいはいらっしゃいますか?
など、出産やきょうだいに関わるものです。「パパとママ、どちら似ですか?」なども含まれます。
自身が出産した赤ちゃんではないこともありうること。それは里親子だけではなく、ステップファミリー(子連れ再婚)かもしれないですし、母に代わって世話をしているご親戚かもしれません。
多様な家族がいることを、初めての声かけの際にも少しだけ意識していただく。
そのことは、結果としてすべての親子が暮らしやすい地域につながっていくと思います。
とはいえ、話の流れでついそうした声かけが出てしまうこともありますよね。
そんなとき、「実は里子で…」と答えが返ってきたら、どんな「二の句」を継ぐことができるといいか?
ワークではこの問いについても考えていただきました。
- 「(お子さんとの)素敵な出会いがあったんですね」
- 「そうなんですね、寝られてますか?」
- 「相談したいことあればいつでも話してくださいね」
- 「里親子であることを他のスタッフにも共有してもいいですか」
などのアイディアを出していただきました。
安心できる場所であることを伝えたいという気持ちが共通していることが印象的でした。
また、どこまで自己開示したい人なのかという、人間関係づくりにおける基本的な視点も重要であることを、参加者のみなさんから挙げていただきました。
もちろん1つの正しい解答があるわけではありません。
何よりも、自然体で受け止めていただくこと。里親子が当たり前に受け入れてもらえることが大切で、そのために、講座の前半でお伝えしたような制度のちょっとした知識なども活用いただけると嬉しいなと思います。
里親家庭の理解者・応援団に
アンケートではこんな感想をいただきました。
- 背景や制度を聞いたりすることで、ぼんやりしたイメージからもう少しはっきりしたイメージを持つことができました。
- あくまでも「普通」の対応だが、話し合いで出たように(制度を)知ったうえで対応していきたい。
- 妊娠→出産→子育てが当たり前と思って話していましたが、そうでない家庭や親子もいる可能性があるということを頭に入れておくことも大切なんだなと感じました。
- 里親への理解はある方だと思っていましたが、支援者としてどう接するかは無知だったので具体例などを聞けて勉強になりました。
- 子どもが好きなのと、少しでも役に立てたらと思い、里親になりたい気持ちが強くなりました。
この出張講座は、それぞれの職場に応じた具体的な場面をもとに、里親家庭の親子について想像し、理解者・応援団となっていただくことを願って取り組んでいます。
里親家庭が当たり前に受け入れられ、多様な家族が暮らしやすい「みんなで子育てする社会」は、こうした場での1つ1つの出会いと対話から生まれるだろうと思います。
バディチームでは引き続き、この活動に取り組んでいきます。
おでかけひろば・保育園・児童館・学童、その他の有志のグループでも、ぜひお招きください!
今回お招きいただいたNPO法人子育て支援グループamigoさん、そしてご協力いただいたともがきの岩田さん、ありがとうございました!
出張講座のお申込みはこちらから!お気軽にお問い合わせください。
このイベントは日本財団より助成を受け、2024年度「里親子に対する理解促進および訪問型支援の強化事業」の一環として開催されました。