特定非営利活動法人バディチーム
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【イベントレポート】 vol.1 里親家庭の親子を地域で支えるためのトーク&ミーティング:プレゼンテーション編

2023年6月25日(日)、オンラインイベント「里親家庭の親子を地域で支えるためのトーク&ミーティング~従事者むけ意識調査と当事者の声から~」を開催しました。
https://buddy-team0625.studio.site/

 

バディチームは今年、里親家庭の親子に日常的に接する保育園や学校、学童、おでかけひろばの職員のみなさんにこそまずは里親家庭について知っていただくため、意識調査を実施しました。

その結果を踏まえ、里親の当事者をゲストに迎えて、里親家庭の親子をみんなで支え、「みんなで子育て」する地域づくりについて語り合ったイベントです。

 

こちらでは2回にわたってその開催レポートをお届けします。

今回はイベント前半の「プレゼンテーション編」です。

 

※後半の「調査結果とクロストーク編」についてはこちらの記事をご覧下さい。

※全編をご覧いただきたい方はこちらのアーカイブ動画をどうぞ!

 

■出演者■

小林孝子:里親当事者

岩田祐一郎:フォスターホームサポートセンターともがき 副センター長

岡田妙子:NPO法人バディチーム 代表

■進行■

濱田壮摩:NPO法人バディチーム 理事

バディチームの里親家庭支援

岡田妙子(NPO法人バディチーム 代表)

 

「里親から里子への虐待が心配」

 

私たちが里親家庭支援を始めたのは、14年ほど前の出来事がきっかけです。

たまたま里親会の代表の方にお会いすることがあった際、その方がバディチームのパンフレットに書かれている「虐待防止」という言葉を見て「虐待か。里親が大変なんだ。里親から里子への虐待が心配なほどなんだ」とおっしゃるのを聞いて、大変驚きました。

私が当時、里親さんに持っていたイメージというのは、子育ての大ベテランで、そこに行けば全てが解決する、安心・安全というようなものであったためです。

 

そのような実態があるならば、当時始めたばかりの訪問型支援が役に立つのではないかと思い、2009年にモデル事業として訪問型支援を実施したところ、実際に里親さんの大変さに気づくことが本当に多くありました。

 

例えば小学生の兄弟間の喧嘩のあり方が異常なほどであるということや、2分の1成人式や生い立ちの授業に対して学校側の配慮がまったくないということで、悩み、疲弊し、また児童相談所への不満を爆発させていたり、そのような方々との出会いがありました。

 

そういった大変さを東京都に訴えていたのですが、当時はまったく相手にされませんでした。

しかし2012年に杉並事件という、3歳の里子が亡くなる事件があり、それを機に里親支援事業が増えたのです。そこで声をかけていただいて、育児家事援助者派遣事業が始まりました。

 

時代の変化と、民間団体としての強み

 

事業のスタート時は、里親さんから「私たちは専業主婦だから、こんな支援を使ったら先輩里親さんに叱られる」という言葉があったり、東京都からは「保育はいいですけれども、絶対に相談は受けないでください」と警戒するようなお話であったり、今では考えられないことがありました。

しかし時代はどんどん変わってきていると思います。

 

今では里親さんも子どもが保育園に入ることができたり、ファミリー・サポートが使えたり、利用できる社会資源が増えていると感じますが、里親さんの場合は利用できる選択肢はより多く必要だと感じています。

 

こういった育児・家事の援助は里親さんの負担軽減が一番の目的ですが、同じ家庭に同じ援助者が継続して伺うことで、子どもの成長を一緒に見守っている一員として受け止められていることもあります。公的機関は異動が多く、めまぐるしく担当者が変わってしまう中で、民間の強みでもあると思っています。

また、バディチームの支援活動に参加してもらうことで、支援者や地域住民のみなさんが里親さんのことを知り、里親さんについて身近に感じられる機会にもなっています。

フォスタリング機関「ともがき」

岩田祐一郎(フォスターホームサポートセンターともがき 副センター長)

 

フォスタリング機関としての4つの事業

 

ともがきの活動についてお伝えしてまいります。

私たちは、母体としては社会福祉法人東京育成園と申しまして、世田谷区で児童養護施設と保育園を運営しています。

 

フォスターホームサポートセンターともがきとして、世田谷区からフォスタリング機関(里親養育包括支援機関)業務の委託を受けておりまして、4つの業務を包括的に受託しています。

①制度の普及促進・リクルート、②研修・トレーニング、③委託に向けたマッチング、④里親養育の支援、になっています。

 

4つの事業について見てまいります。

①普及促進・リクルートについてです。里親さんのこと、制度のことを広く理解していただいて、里親のなり手を増やしていこうという活動です。

世田谷の里親相談室「SETA-OYA」というホームページの運営をしており、制度の詳細のご説明やお問合せの対応、また世田谷区内で里親をされている方のインタビュー記事も掲載しています。

 

他には、写真展を開いたり、チラシを作ったり、公式LINEを作ってそこで里親さんのちょっとしたお話を配信してみたりもしています。

企業さんにご協力いただいて、アパレルのブランドの新作の受注会のようなところで、制度説明をさせていただくという少し面白いイベントをやったり、世田谷区内にあるカフェで里親制度に関するお話をするイベントを作ってみたり、ポスターを貼ったりもしました。

 

また、世田谷区の中にある大きな商業施設の中の、人通りが3000~4000人ほどある場所でイベントを実施して、制度のことをよく知らない方も含め、様々な方に制度に触れていただくようなイベントも行いました。

 

 

続いて、②研修・トレーニングです。

子どもが安心して里親さんのお宅での生活を継続安定できるというのが、この研修とトレーニング事業の大きなミッションであると思っています。

 

様々な研修を開催していまして、里親さんのニーズ・子どもたちのニーズに合わせて、「この研修いかがですか?」とお声がけをしながら、それぞれの状況にあったお力を得ていただいて、日々の養育や子どもの支援に活かしていただけるようにと考えています。

 

③マッチングとは、子どもと里親さんの出会いを支援する事業です。

基本的には児童相談所が行うことですが、そこに対して、フォスタリング機関として関わってきた里親さんの情報を児童相談所とも共有し、「こういうお子さんには、この里親さんがいいんじゃないでしょうか」という推薦をするのが主な仕事です。

その後、決まったらすぐに預けるのではなくて、お子さんを預かっていただくために段階的に、出会いから初めて、外出したり、お泊りしたりという交流が必要なので、その際に間に入ってサポートするような役割を担います。

 

④養育支援というのは、子どもがある程度育った段階で中途養育という形で受け入れる里親さんたちのご苦労がいろいろな形でありますので、一義的な相談窓口となってお受けして、いろいろな方々と協力しながら養育の支援をするという仕事になっています。

それは、養育中のサポート、全体的なサポートから、学校さんとのやりとりがあったり、ご家庭に訪問してお話をうかがったり、18歳になって里親さんのもとから自立していく際に、その社会生活を応援するための自立支援というものも入っています。

 

事業の連続性と、地域へのアプローチ

 

これらの事業を実施する上で大事にしたいこと、目指していくことは、連続性のある事業の実施です。

 

普及促進を行うことで、里親さんの登録数を増やしていくということにも当然つながっていきますし、研修を実施して子どもたちへの対応力をつけていただくことが、マッチングや養育支援において養育の安定を図っていくということにもつながります。

そしてマッチングと養育支援が2つ合わさると、結果として「里親になりやすい」地域になっていくのではないか、つまり登録数を増やしていくことにつながるのではないかと考えています。

 

 

さらにいうと、地域へのアプローチが重要だと思っており、普及促進や研修や養育支援を行う際、「チーム養育」ということで、みんなで里親さんの子育てをサポートしていくネットワーク作りというのも、私たちフォスタリング機関の仕事です。

 

そうした働きは、地域の理解の促進にもつながります。

地域の子育て支援には様々ありますが、里親さんの養育に関わったことがないという方もとても多くいます。そういう方々を里親さんむけの研修の講師としてお話しいただいたりすると、「もっと里親のことを知りたい」と言ってくださる、というふうに広がっていきます。

このような動きが続いていけば、里親さんが養育しやすい地域になっていくのではないかと思っています。

 

すべての事業がつながって、地域の力をつけていくということを大事にしたいと思っています。

 

その他、私たちは施設を母体とした機関ですので、児童養護施設の機能を活用していきたいとも思っていますし、地域の子ども支援においてできることも考えていきたいと思っています。

「社会的養護」がその中に含まれる「社会的養育」という考え方において、その対象はすべての子どもたちです。世田谷区のフォスタリング機関として、実家庭を離れる子どもだけではなくて、地域のすべての子どもたちのために、このフォスタリング機関事業を通して関わっていけるようにしていきたいと思っています。

里親インタビュー

小林孝子(里親当事者)

 

濱田

続いて当事者からということで、小林孝子さんのご紹介です。

2007年に養育家庭として登録をされて16年になる里親さんでいらっしゃいます。お仕事は看護師をしておられます。

里親さんにも4つの区分があり、被虐の経験や非行などの背景を持つ子どもを養育する専門里親という区分がありますが、その専門里親でもいらっしゃいます。

そしてこれまで、3歳から18歳まで6人の里子の養育を経験された、経験豊富な里親さんでいらっしゃいます。

 

 

どうして里親に?

 

濱田

まずは1つ目のご質問です。里親になったきっかけについてお話をいただけますでしょうか?

 

小林

はい。私は4人きょうだいの一番上だったこともあり、子どもがたくさんほしいという希望があったのですが、1人目の実子を生んだところで、自分の持病でこれ以上は子どもは持てないと言われ、いったんは諦めました。

 

しかし看護師として世田谷区の中でお子さんの健診などに関わる仕事をさせてもらっていたときに、区の養育家庭のポスターを見て、こういう制度があったんだということを知り、先に娘に相談をしてから、主人にも相談をして登録しました。

 

濱田

ありがとうございます。「先に娘に相談をしてから」ということでしたが、里父さんである旦那さんは、最初どのような反応でしたか。

 

小林

きっと反対されるだろうと思っていた通り、「責任が持てないのではないか」「長く預かるのは無理なのではないか」と最初は反対されました。ただ、娘と一緒に説得していきました。

 

濱田

決め手になったポイントはあるのですか?

 

小林

娘が、弟や妹がほしいと言ったことと、あと長期でなく短期という制度もあるということで、その辺りから説得をしていきました。

そして「短い期間だったらできるかもしれないね」ということで、登録することができました。

 

当初は反対していた里父の提案で縁組

 

濱田

ありがとうございます。

では2つ目の質問にまいります。里子さんたちにはどんな背景があったのでしょうか?という質問です。

6人の里子さんを迎えられて育てられたということですが、差し支えない範囲で結構ですので、それぞれどんな背景があってお家にいらして、どのぐらいの期間いらっしゃったのか、聞かせていただけますでしょうか?

 

小林

最初にお預かりしたお子さんは、登録をして数ヶ月のときにお話をいただき、2歳半から交流をして、3歳から委託となりました。今、18歳になって、まだうちにいます。

 

~中略~

※お子さんのプライバシー保護のため詳しい背景については割愛いたします。 ご了承ください。

 

濱田

今さらっと「今もいるんですけど」とおっしゃいましたが、里父さんは短期だと思っていたら、長くいることになったのですね。

 

小林

そうなのです。最初に預かった子はそのままずっと長期でいます。

 

濱田

通常、里親が養育できる子どもの年齢は18歳までですが、そのお子さんは縁組をされたとか。

 

小林

そうなんです。実は主人の方から、彼が高校生に上がるときに、「社会に出るときに実親さんの手助けなどはないし、せっかくうちでこんなにずっと一緒に生活しているわけだから」ということで。娘も「もう家族だから」と言ってくれたので、高2のとき縁組させてもらいました。

 

濱田

最初は「短期だったらいいか」と言っておられた里父さんが、時を経て、もう縁組をして家族になってもらおうと(もちろんそれまでも家族だったわけですが)、言い出してくれたというのが、1人目のお子さんですね。ありがとうございます。

 

~中略~

※お子さんのプライバシー保護のためこの後のお子さんの背景については割愛いたします。 ご了承ください。

 

濱田

ありがとうございます。6人のお子さんの背景がすごく様々にあって、関わる期間も様々だということがわかりました。

 

里親としてのよろこび

 

濱田

では、3番目の質問にまいります。そのような6名のお子さんの養育の中で、里親として嬉しかった、やっていてよかったと思うのは、どんな場面でしょうか?

 

小林

2人目のお子さんを預かったときに、1人目の男の子が小学校2年生くらいだったのですが、2人で「お母さん、お母さん」と言って、買い物に行くと「俺が荷物を持つ」「俺が持つんだ」と言い合っているのを見たときに、本当に嬉しさを感じました。

 

濱田

お母さんのために自分が役に立つんだと競い合ってるようすですね。

やはり「お母さん」と呼ばれるのは嬉しかったですか?

 

小林

嬉しかったですね。本当のお母さんがいらっしゃるので、「コバヤシさん」と呼ぶのかと思っていました。でも、子ども担当の方(児童相談所の子担当職員)が彼に聞いたところ、本当に静かな男の子だったのですが、「お母さんって呼びたい」と言った、と聞いたときには、嬉しかったです。

 

濱田

お子さんが自分で選んで決めたのですね。

これも家庭ごとにそれぞれのお子さんが、実親さんとの関係性の中で里親さんのことをどう呼ぶのかは、それぞれの形でいいのだと思いますが。

ちなみに「お母さん」という呼び方ではなかったお子さんもいらっしゃいましたか?

 

小林

「小林さん」っていう女の子もいましたし、去年の子は「コバちゃん、コバちゃん」って呼んでました(笑)

 

子ども1人1人に向き合う

 

濱田

続いて4番目のご質問。逆に苦しかった場面はどんな場面でしょうか?

 

小林

苦しかったのは、1人目に預かった子がいる中で、もう1人が来たときに、家族のバランスが崩れてきてしまったことです。

やはりみんな自分のことを見てほしいので、仲が悪くなったり、(実子の)お姉ちゃんが怒ったり、お父さんもちょっとイライラしたりといったことがありました。また、長く預かっていた1人目の子がちょっかいを出されることもありました。

 

それに対して私が一応、司令塔のように、みんなに声をかけるのですが、なかなかうまくいかずしんどいと感じることが多々ありましたね。

 

濱田

このように2人目、3人目と預かる中での難しい状況は、周りの里親仲間さんもよく経験されているのでしょうか?

 

小林

そうですね。お預かりして1~2ヶ月は、みんな寝起きの時間や食事の配分からいろいろ変わってくるのでその対応も大変なのですが、今度はそれが慣れてくると、お預かりした子も自分を出してくるため、結構大変になってくるという話は聞きますし、私もそうでした。

 

濱田

専門機関の方にお話を聞いたときも、委託直後の3ヶ月や6ヶ月については「『まあいろいろあると思うから覚悟してください』と伝えてるんです」というようなお話もされていました。そういう期間に我々も第三者として支援ができればと思っていますが。

ちなみに、そういう場面をどうやって乗り越えたのですか?

 

小林

みんながいる中では、お互いに言いたいことをぶつける子もいれば、隠す子もいるので、なるべく1人1人に対して個別の時間をとって、そこで話をするようにしました。

 

濱田

1人1人にしっかり向き合う時間を作ったと。

小林さんご自身は誰かに相談などされていましたか?

 

小林

やはり里親さんに相談することが多くありました。あとは自分の職場の子育ての経験がある方、また児童相談所や里親支援専門相談員さん(岩田さんもそうでした)にもお話をして、何とか切り抜けてきました。

 

濱田

最後、5つ目のご質問です。もっと理解が広がるといいなと思うのはどんな場面でしょうか?

 

小林

私も感じたし、周りにも多いのは、公共機関や学校、特に入学式や卒業式などの際の様々な手続きの場面です。

やはりまだまだ、里親に関わるのが初めてという方も多い中で、何度か経験した方であればいろいろなことがスムーズに行えることもあるのですが、難しいことが多いですね。

 

あとは医療機関を受診する際の受付窓口です。保険証が違ったりもするため、なかなかうまく受け入れてもらえなかったり、そこで苦労したことはあります。その点は理解が広まればいいなと感じました。

 

濱田

医療機関でのお話が出ました。これはまた後半の方でもお話ができればと思います。

入学式においては、どのような困りごとがありましたか?

 

小林

うちの1人目の子は通称名の「小林」で通っていたのですが、入学の許可証はやはり実名で発行されてくるので、名簿の変更をお願いしに行きました。

ただ先生方の人事異動などの関係もあって、3月にお願いしに行っても、4月に行ったときには名簿が実名になっていたり、うまくいかずに困ったことがありました。

 

濱田

3月に事前にお願いしていたものが、4月に蓋を開けてみたら違っていたということがあるのですね。

 

小林

そうなのです。仕方ないことではあるのですが。

 

濱田

それを「仕方ない」で終わらせないような地域にしましょう、というのが今回のテーマでもありますね。

ありがとうございました。この後の調査結果の紹介の中でも、いろいろお話が聞ければと思います。

 

→ 調査結果とクロストーク編に続きます!

→ 全編をご覧いただきたい方はアーカイブ動画をどうぞ!

 

本イベントは「2022年度 ドコモ市民活動団体助成事業」からの助成を受けて実施されました。

 

 

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