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【イベントレポート】vol.2 里親家庭の親子を地域で支えるためのトーク&ミーティング :調査結果とクロストーク編
2023年6月25日(日)、オンラインイベント「里親家庭の親子を地域で支えるためのトーク&ミーティング~従事者むけ意識調査と当事者の声から~」を開催しました。
https://buddy-team0625.studio.site/
バディチームは今年、里親家庭の親子に日常的に接する保育園や学校、学童、おでかけひろばの職員のみなさんにこそまずは里親家庭について知っていただくため、意識調査を実施しました。
その結果を踏まえ、里親の当事者をゲストに迎えて、里親家庭の親子をみんなで支え、「みんなで子育て」する地域づくりについて語り合ったイベントです。
こちらでは2回にわたってその開催レポートをお届けします。
今回はイベント後半の「調査結果とクロストーク編」です。
※前半の「プレゼンテーション編」についてはこちらの記事をご覧ください。
※全編をご覧いただきたい方はこちらのアーカイブ動画をどうぞ!
■出演者■
小林孝子:里親当事者
岩田祐一郎:フォスターホームサポートセンターともがき 副センター長
岡田妙子:NPO法人バディチーム 代表
■進行■
濱田壮摩:NPO法人バディチーム 理事
「従事者」むけ調査
実施概要
濱田
後半は、今年実施した調査結果を踏まえ、また今の小林さんのお話も踏まえつつ、4人でお話をしていければと思います。
今回の調査で対象としたのは、世田谷区内の職員のみなさんです。区立の保育園、小学校、中学校、それから小学校に併設されて世田谷ではBOPとも呼ばれている学童、またおでかけひろばの職員さんが対象です。
WEBアンケートで、設問数は基本情報を除いて20問。様々な制約がありあまり大量にはできないため、絞りに絞った20問になります。
設問数を絞ることになったので、制度紹介用のチラシも同封し、設問に盛り込み切れなかったものを掲載してお伝えしました。
157件の回答をいただいています。
また今回の調査は、保育園、小学校、学校、学童、ひろばの職員という「従事者」のみなさんむけになっているので、そうではない「一般市民」との比較ができるよう、日本財団が過去に実施した意識調査を比較対象として、設問文、選択肢などを作成しています。
里親制度についての認知と、「里親になる」ことについて
里親制度について知っていますか?
濱田
では20問を順番にご紹介をしていきたいと思います。
最初に聞いたのが、「里親制度について知っていますか?」というテーマですが、1番から8番まで「以下のことは知っていましたか?」というふうに聞いています。
太字にしているのは「知らなかった」が、比較的多かったものになります。
回答の下位項目を3つ抜き出してみます。
これを日本財団調査の一般市民むけのものと比較したのが、下の緑の四角部分です。
こうして比較をしてみると、今回対象にさせていただいた従事者のみなさんは、一般市民よりも全体的にスコアが10ポイント以上は高いことがわかります。
一方で、4万人という数値や、結婚していなくても登録できるというような要件、あるいは短期でのお預かりや、「季節里親」といわれる方法など、里親にも「バリエーション」があるということが、まだ知られていない部分があるようです。
ここで岩田さんにお聞きします。
「結婚していなくても、大人が2人以上住んでいれば里親になれる可能性はある」というところについてですが、実際にいらっしゃるんでしょうか?
岩田
養子縁組を目的とする「養子縁組里親」というのは、結婚していることが条件になるのですが、それ以外の「養育家庭」は、この要件に当てはまります。
実際に東京都内にもいらっしゃるようで、例えば、同居する成人のご兄弟や親子、また事実婚の方々などが登録されています。また同性のパートナーさんと一緒に生活されている方々も里親登録できるので、そういう形態で里親登録されている方もいらっしゃいます。
濱田
ありがとうございます。同性パートナーどうしの方も実際いらっしゃるということですね。
ちなみに実は岡田さんも、まさにこの要件の当事者になりますね。
岡田
そうですね。念願が叶って昨年末、里親登録ができました。
私は事実婚で成人した子どもが1人いるのですが、その要件でクリアしました。
また里親さんを増やすという全体の動きの中で、今までは難しかった部分が可能になったということもあるようです。
どのような条件があれば「里親になりたい」という気持ちがわくか?
濱田
この後に聞いてみたのが、「里親になりたい」という意識についてです。
「あなた自身が里親になりたいですか?」ということは設問数などの関係で入れられなかったのですが、「より多くの人が『里親になりたい』という気持ちがわくために、どんな条件があればいいと思いますか?」と聞いています。
抜き出してみますと、上位項目がこうなりました。5項目です。
(複数回答を可能にしているので、合計が100%にはなりません)
これを日本財団調査と比較してみたのが、下の緑の四角部分です。
日本財団調査では「なりたいと思う」という文言ではなくて、「興味を持つ」「どちらかというと興味を持つ」というような設問だったため、単純な比較はできませんが、気軽に相談できる場所・相手、あるいは家族の理解、そして金銭面サポート、というところでいうと、傾向としては同様です。
今回の調査の特徴といえるとすれば、8番のフォスタリング機関のような支援機関があれば、という項目と、10番の子どもとの関係構築の支援があれば、という項目です。
里子を迎えて養育していくには支援が必要だという、従事者のみなさんなりの視点、支援の必要性ということが割と強く出ていたのが、この項目かなと思います。
どのようなことを知れたら「里親になりたい」という気持ちがわくか?
濱田
続いて問10です。少し似ていますが、今度は「どのようなことを知ることができれば、より多くの人が『里親になりたい』という気持ちがわくと思いますか?」と聞いています。
ここから抜き出してみた上位項目が次の3つです。
子どもの背景、どのような物理的サポートがあるのか、里親たちの体験談、となっています。
今、都内でも「養育体験発表会」を必ずやっているのは、このようなニーズに沿ったものだと思います。
一方で、2番の「子どもの背景」に関しては、そういえばあまり聞いたことなかったように思うのですが、岩田さん、お話を聞いてもよろしいですか。
これまでの啓発活動・広報活動という中で、保護されたり、里親家庭に行くことになったりするお子さんの背景は、何か出しにくい事情があるのかなと考えるのですが、実際にはいかがですか?
岩田
本当に様々な事情で子どもたちは保護されて、里親さんのお宅に行くことになります。それこそ虐待や、貧困、親御さんのご病気など多岐にわたるのですが、やはり、中には子どもたちがその背景を知られてしまうことで、苦しい思いをしてしまうといったところも、情報が出しにくい要因であると思います。
ネガティブな背景を持っている子どもたちが多いので、それに対して周りがひどく同情的な扱いをするだとか、逆に差別的な扱いをされるだとかということから、子どもたちを守らなければいけないというのも理由の一つです。
また、子どもたちと離れたくて離れた実親さんは少ないので、中には一生懸命、子どもはどこにいるのか探していたり、どうにか会いたいというお気持ちで、保護する児童相談所と敵対関係になってしまったりするような実親さんもいます。
それを表に出すことで、子どもたちを守ることが難しくなったり、預かっていただいている里親さんを守ることも難しくなったり、そういうリスクも考えられます。
そうしたことから、子どもの背景を大々的に表に出すというのは難しい状況があるのだと思います。
濱田
ありがとうございます。
どんどん表に出していくことで関心を持ってもらえるのなら、出していけばいいと考えてしまいますが、やはり子どもを守り、里親さんを守るには、なかなかそうやすやすと出しにくいというのが実状ですね。
岡田さんにもお聞きします。
バディチームは里親家庭とは別に、実親実子家庭の養育困難家庭にも支援をしていますが、その中で保護となるような家庭もあると思います。
お伝えできる範囲で、どのような家庭でしょう?
岡田
先ほどの小林さんのお子さんのそれぞれの背景のお話であったり、今の岩田さんのお話の通りなのですが、様々な病気、保護者の方の精神疾患を含め、病気や障害、貧困など、いろんな要因が本当に複合的に背景にあります。
実際に虐待という部分でいうと、身体的虐待があったり、小さいお子さんであったりすると、やはり少し保護されるのが早いかなというような印象は受けています。
逆に少しお子さんが大きくなって学童期になったり、あるいはネグレクトの状況で、すごく家庭環境が不衛生な状況であったりする場合に、「これでも保護にならないのか」と思ってしまうようなところも私たちの活動の中では多々あります。
濱田
こども家庭庁の資料で「措置理由別児童数」が掲載されています。
その中では虐待と養育拒否が、合わせて4割ほどという数字が出ています。4割の虐待はまったく無視はできない数字ですが、しかしそれ以外の理由が6割を占めているのだともいえます。
本当にのっぴきならない、障害や疾患などの事情があって、困った状態が生まれてしまうということを知ってもらうような伝え方ができるといいなと思いますね。
里子養育についての認知と、「里親を支える」ことについて
里子の子育てについて知っていますか?
濱田
続いて、ここからが本丸です。
里親家庭を支えるという観点から、「里子の子育てについて知っていますか?」という設問です。問11から16まで、このようになりました。
太字で示したのは、「知らなかった」が比較的多かった設問です。
問16の「里親家庭むけの保育や家事の援助制度がある」というのはバディチームの取り組みのことですが、まだまだ知られておらず、頑張らなければいけないなといったところです。
それ以外のところで気になるのは、赤い丸を付けた問12・13・15です。
特に問15については、学校の中で困る場面ということで、多く挙げられるケースなのですが、意外と認知はされているのだということが数字に出ています。
そもそも関心のある方が回答している可能性があるという前提を考慮しても、認知はされているのだなという印象です。
そんな中でも「知らない」の割合が多かったのが、問14「里子が実親の姓を使用し、里親と異なる性で生活することが多い」です。
逆パターンでいうと、里子が里親の姓を使用して、通称名つまり戸籍と違う姓で生活することも多い、ということを知らない人の割合が半数ほどありました。
「いろんな背景があって、発達とか大変なんだよね」ということ、あるいは「生まれたときのこととか情報がなくて困っちゃうことがあるんだよね」ということは、なんとなく知ってはいるけれども、「違う苗字で生活している」というような、もう少し具体的な生活場面が、まだ知られていないのかもしれないというのが、示唆されるところです。
関連して受診券のお話ですが、受診券というのは児童相談所が発行するもので、里子さんが医療機関を利用するときに、健康保険証の代わりになる券のことです。
しかしこれを医療機関の側が知らないと、断られてしまうことがあるというお話もあります。小林さん、実際のところはいかがでしょうか?
小林
普通の保険証とは違い、紙をパウチしたやや簡易的なものです。それを出したときに「うちではこれは使ったことがないから使えません」と断られた里親さんもいると聞きました。
初めての医療機関ではざわついてしまうこともあり、その横で里子が嫌な顔をするということは、うちもよくありました。
濱田
そうなると他の患者さんもいる窓口で「いや、うちは里親で、児童相談所で発行されたもので…」と説明をしなければならないといった状況になると。
今のは医療機関の場面でしたが、学校でも、例えば課外授業などで保険証のコピーが必要となった際に、先生が受診券を見て「これ、何?」となってしまうことがあったとも聞いています。
岩田さん、先日うかがったお話ですと、このあたり多少は改善されているということでしたが、いかがでしょうか?
岩田
現在、児童相談所やフォスタリング機関の職員が、お子さんが通っている学校や保育所に必ず訪問し、制度の説明を差し上げるような仕組みができています。
私も今年度に入ってから児童相談所の方と一緒に、何件か学校さんに伺ってお話をし、制度の説明だけでなくて具体的に「こういった受診券っていうものがあって…」ということや、先ほどの姓の話や、2分の1成人式の話もしてきました。
そうしてお子さんたちに対しての配慮や、行ってほしい支援っていうのをお願いして回っております。
濱田
ありがとうございます。フォスタリング機関として、具体的な対応の仕方もお伝えをしているということですね。
「里親家庭の親子に対して支えになりたい」という意識
濱田
問17~19なりますが、今度は「里親になりたい」ということではなく、「里親家庭の支えになりたい」という意識について、このような聞き方をしてみました。
「これまでの設問とチラシの別紙資料から里子養育に関する情報を知る前と後を比較して、『里親家庭の親子に対して力になりたい、あるいは支えになりたい』という意識について、近いものはどれですか?」という問いです。
すると、「明確にそう思う」と「なんとなくそう思う」を合わせた肯定的回答が、情報を読む前は62.4%、情報を読んだ後には73.9%ということで、11.5ポイント増加しています。
当たり前のことかもしれませんが、やはり知っていただくことが大切だということです。
また緑の四角部分の中に書かれているのが日本財団での調査です。
里親に関する情報を提示した後に、「里親になってみたい」「どちらかというとなってみたい」という人が、情報の提示前後で5.8ポイント増えた(6.3%→12.1%)という結果が出ています。
これは設問文も異なるのでまったくの参考ということで、単純な比較はまったくできないのですが、「情報を知ったときの意識が変わる度合い」においては、いわゆる一般市民という方たちよりも従事者のみなさんの方が、高い傾向があるのではないか。あくまで示唆というレベルですが、こうした結果になりました。
意識変容があったのはどんな人か?
濱田
では意識が変わったのはどのような人なのか、という点について考えてみたいと思います。
まずは実子の有無。
順番としては、大きいお子さんがいる、次にお子さんがいない、そして小さいかどうかまでは分からないですが18歳未満のお子さんがいる、という順番になっています。
つまり肯定的な意識変容があった人というのは、子育てが一段落している人か、あるいは子どもがいない人、と見て取れます。
次に年代別に見てみます。
情報を読む前後での変化の度合いが大きかった世代を比べると、30代以下の方は14.3ポイント増、50代以上の方は14.8ポイント増。これらに対し、40代は4.2ポイント増ということで、意識変容が小さいことがわかります。
変化の度合いで見ると40代の意識変容の度合いが小さいという結果になりました。
問18と19の結果まで見ていただいて、これらのことから仮説を立ててお話ができればと思います。
問18では肯定的な回答、つまり「支えになりたい」と思う理由を聞いています。
「実親家庭も里親家庭も、同じように子育てには支えが必要だと思うから」というのは、バディチームの活動の原点でもありますね。
問19はその逆で、否定的な回答の理由です。
理由として最も多かったのが、「自身の業務に余裕がないから」でした。
これらのことから仮設を立ててみると、忙しい中間管理職を担う立場にいて自身も子育て中だという40代の人よりは、子どもがいない30代以下や、子育てがひと段落している50代の方が、意識変容を引き出しやすいのではないか、といえそうです。
あくまでまったくの仮説ですが。
何を伝えるべきか?
濱田
さて、最後です。
今、「誰に」伝えていくべきかについて見てみましたが、今度は「何を」伝えるべきか、という点から、最後の設問を見ていきます。
「保育園、学校、学童、おでかけひろばの職員として、どのような条件があれば、より里親家庭の親子に対して力になったり、支えになったりすることができると思いますか?」という問いです。
割合が大きかったのが太字で示したところです。
「里親家庭への具体的な対応方法や留意事項について知る研修等」というのが一番多くなっています。
それは「制度について知る教材」や「制度について知る研修等」よりも明らかに多い。
次に多いのは「里親・里子たちの体験談」です。
一方で、「自身の業務に余裕があれば」については意外と少ない数値です。
つまり、先ほどの否定的回答の理由にあったように「支えになりたいという気持ちは何ともいえないな、自分の仕事が大変だからな」とは思いつつも、それ(自身の業務負荷)が解消されることよりも、そんな中でも、具体的な対応方法を知ることができれば、自分も支えになれるのではないかと考えている、そんなストーリーラインができるのではないかと感じます。
これらのことから仮説を立ててみると、教材や資料を使って制度そのものを伝えるというよりも、具体的な対応方法を里親子の体験談とともに伝えることが、意識変容や行動変容を引き出しやすいのではないか、といえそうです。これもあくまで仮説です。
質疑応答
具体的な対応方法?
濱田
では、その具体的な対応方法とは何なのか、というお話になっていきます。
岩田さんから先ほど、学校に行っていろんな具体的な対応をお伝えしているというものをいくつか挙げていただきましたが、他にどんなことをお伝えしているか、例を挙げてみていただけますか?
岩田
例えば、小学校の卒業式で卒業証書が発行されると思いますが、これは基本的には戸籍名で発行されることになっています。
しかし里親さんの苗字(通称名)で小学校に通っているお子さんもいるので、「卒業証書を2通作っていただけませんか」とご相談を差し上げることがあります。
実名のものも発行するけれども、全体の会でみんなの前で読み上げるのは通称名のものにしていただきたい、などといったことです。
また、2分の1成人式の話もありましたが、生い立ちや出自に関する内容ではなく「将来の夢」などに内容を変更していただけるような調整をお願いすることもあります。
濱田
ありがとうございます。「卒業証書を2枚作ってください」ということなど、そんな簡単なこと?と思うようなことなのですが、すごく特別なことをしてほしいのではなく、本当にこのような些細なことでいいのだな、と感じます。
小林さんのご経験やお仲間の中で、例えば生い立ちの授業などで、「こんな対応してもらって助かった」といったことや、逆に「ちょっとこんな対応で困っちゃった」といったことはありましたか?
小林
2分の1成人式のときに、うちの子どもは自分で考えたものを発表するという形式で、とてもストレスを感じていたようで大変でした。
他の里親さんに聞いたところ、みんなで発表するのではなくて、お手紙にしてそれを親御さんにわたすという形式を先生がとってくださったということがあったそうです。
それはとてもいい対応ではないかと思います。
それから保育園や幼稚園では、幼少期からのアルバムを作ることがよくあります。私もそうでしたが、小さいときの写真を持っていないことが多く、困ってしまうことがあります。
私は周囲に里親だと公表していましたが、周囲に知らせずに通っていた方はずいぶん困ったようです。
その方は、困った末にママ友に相談したところ「自分も3才のときの写真しか出さないから、あなたもそれでいいんじゃない?」と合わせてくれたと聞き、いいお話だと感じました。
濱田
最後のエピソードは、園の対応というよりは、ママ友という関係の中で「うちもないから一緒でいいじゃん」と仲間になってくれたといったお話で、それもいいお話ですね。
ありがとうございました。
ご近所・地域では?
濱田
参加者の方からの質問にまいります。
「里親さんはご近所さんにしてほしいこと、希望することなどあるのでしょうか?してもらって助かったことなどありますか?」
これは小林さんにお聞きしたいと思います。ご近所さんとの関りについて、いかがでしょうか?
小林
私が長く預かっている子は、道路に飛び出したり、自転車でジグザグに走ったり、私の見えないところでいろいろやっているようで、近所の方が注意をして私に伝えていただいて、「そんなことしてたの!?」と気づくことがありました。
知らないところでそのように声をかけてくれたり、「また注意してください」とお願いしたりと、そういったコミュニケーションが本当に一番助かりました。
以前、彼が帰宅して鍵を開けようとしたところ、鍵が半分に割れて使えなくなってしまったことがありました。
私は仕事に出ていたため、困った彼は近所のケーキ屋さんに行ってお話をして、「じゃあ、お母さんが帰ってくるまでここで待ってなさい」ということで、マドレーヌを食べながら待たせてもらっていたこともありました。
里子でなくても、自然にそういったことをしてくれて、何かあれば彼が自分で頼めるような方がいると、本当に助かるなと思いました。
濱田
「おでかけひろば」では、困る場面はありますか?
岩田さんから先日お話をうかがったところでは、「産院はどちらですか?」という話を自然にされてしまって戸惑うこともあるということでした。ひろばのスタッフさんとしてもよかれと思ってお声がけしていることではあると思いますが。
小林
私自身はあまりおでかけひろばを利用したことがないのですが、3歳から里子を預かっていたりすると、出生体重や出生週数など、母子手帳をお預かりはしていても、頭にまだ入っていないこともあります。そのようなときに「何グラムで生まれましたか?」などと聞かれると焦ってしまうことがあります。その辺りが苦労を感じるところです。
自分で生んで育ててれば普通に頭に入っている情報ですが、「何歳ぐらいで歩いたの?」といったところは本当にわからないので。
私はお声がけされて聞かれるというよりも、書く場面はよくあったので、いつも情報を探したり、乳児院に聞いたりというのは苦労しました。
濱田
書く場面というのは利用者登録みたいなことですか?
小林
そうですね。大体、小児科だとそういうことが多くあります。何グラムで生まれて、帝王切開だったかどうか、などです。
うちの子は少し発達障害があったので、療育を受けるときも「何歳で歩きましたか?」「何歳で喋りましたか?」といったことを書かなければならなかったため、その辺りは大変苦労しました。
濱田
それは大変ですね。。
そういった場面では、具体的にどうしてもらえたらいいと考えられますか?
小林
利用するときに「おうちに帰ってから書いてもいいですよ」などと言ってもらえると助かるかなと思います。
濱田
ああ、そうですね。里親家庭でなくても、例えばステップファミリーでも、生まれたときの情報が頭に入っていないということは往々にしてある話なので、そういう家庭もあるはずだという前提のもとで、「おうちに帰って書いてきていいですよ」と配慮してもらえるとありがたい、と。
「特別扱い」ではなく、「普通」のアップデートを
濱田
そろそろお時間となります。
これから「従事者」のみなさんに対して、意識をしてもらうとか、対応をしてもらうとかいったうえで、どういう内容や方向性で私たちは発信をしていくべきなのかということについて、小林さん、いかがですか?
小林
先ほどアンケートにもありましたが、普通の一般の家庭も里親家庭もやはり子育てはとても大変なのですが、その中で、特別扱いはしていただかなくても、本当に普通に接していただきたいのです。
ただ、幼少期のことを知らないということや、あとは一番感じるのが、里子さんにはもちろん実親さんがいるので、私たち里親に遠慮して話さないことが割と多いのです。
それを保育園の先生や学校の先生が少し拾ってもらって、私たちに伝えてもらえると、何を考えていたのか、どんな考え方をしていたのかを知ることにもつながります。
そんなに遠慮して言わなかったんだ、ということが結構ありました。その辺りは時々、気遣っていただき、声をかけてもらえると、嬉しいなと思います。
濱田
すごく特別な扱いをしてもらいたいっていうことではないけれども、その中でも、「このぐらいだったら家でお父さんお母さんに話しているかな」ということが、なかなか言えないお子さんたちだったりする、と。
そこを少し気を付けていただけると、お仕事が大変な先生方にあっても、ちょっとした気遣いで里親子が助かることがたくさんあるということかもしれません。
最後にお三方から一言ずついただいて締めたいと思います。
岡田
私たちも15年ほど里親さんの家庭支援に携わる中で、今、ともがきさんのようなフォスタリング機関が増え始め、大変大きな時代の変わり目にいると感じています。
そのような中でやはりバディチームとしてのこれまでの経験や、里親さんの経験、また実親さん側の養育支援の経験などを活かして、何ができるのかを改めて考え、これからも里親子のために活動を続けていきたいと思っております。ありがとうございました。
岩田
今まさに必要とされているのが、「普通」という価値観をアップデートしていくことだと思っています。
それぞれの人なりの「普通」があって、家族というもの一つ捉えても本当に多様な形態があると思うので、それが里親子さんだったとしても、当たり前に受け入れられて、どんなご家庭にも当てはまる配慮がされているということが、目指す地域だと思っています。
私たちは今年度、「里親子が暮らしやすい街は、きっと、あなたも暮らしやすい街。」というキャッチコピーを設けて、世田谷区を里親さんや子どもたちが受け入れられて暮らしやすい地域にしていくために活動をしていきたいと思っています。
それが里親になりやすい地域につながって、多くの子どもたちを守ることになると信じています。
小林
私も何人かのお子さんをお預かりして、学校の先生や保育士さん、関係機関の方にお世話になりました。みなさんに支えられて子育てが助かってきたんだなと思っています。
里親会の仲間も増えてきました。どこかでお会いしましたら、お声をかけていただければと思います。
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本イベントは「2022年度 ドコモ市民活動団体助成事業」からの助成を受けて実施されました。