【今日このごろのこと】vol.10 みんな自分ごと
コラム 2025.04.18
【出張講座レポート】中野区・聖ピオ保育園
バディチームでは2024年度、日本財団より助成を受けて「里親子に対する理解促進および訪問型支援の強化」事業に取り組みました。
その一環として、保育・教育・子育て支援に従事する職員の方々を対象に、里親子への具体的な配慮や対応についてお伝えする出張講座を実施しました。
2025年3月3日(月)、中野区にある聖ピオ保育園さんで開催した出張講座のもようをレポートします!
聖ピオ保育園
西武新宿線・鷺ノ宮駅から徒歩5分ほどの場所にある「聖ピオ保育園」。
運営するのは社会福祉法人聖オディリアホームさん。同法人内の聖オディリアホーム乳児院では、里親家庭支援にも取り組んでいらっしゃいます。
雪の降る寒い日でしたが、保育園の園長先生ほかスタッフのみなさんがご参加くださいました。
里親制度について
今回は中野区の里親支援機関である「さとおやこほっとステーションあいりす」さんとの協働開催。
まずはあいりすさんから、里親制度についてお話をしていただきました。
お話は○×クイズ形式!
みなさんは何問正解できるでしょうか?
Q1.独身でも里親になることができる
Q2.実子がいても里親になることができる
Q3.里親に委託された子は、成人になるまで里親家庭で生活をする
Q4.里親委託後も、実親と子どもが交流することがある
Q5.里親委託になると、里親の苗字を名乗る必要がある
Q6.子どもの子育ては里親だけで行う
正解はこちら!
Q1.独身でも里親になることができる → ○
基本的には20歳以上の大人が同居していれば、独身でも登録できます。
夫婦でなくても、親子やきょうだいで里親になることもできます。
Q2.実子がいても里親になることができる → ○
里親家庭の実子ならではの様々な葛藤を抱えていることもあり、支援から見落とされがちな面もあります。
Q3.里親に委託された子は、成人になるまで里親家庭で生活をする → ×
必ずしも成人になるまで里親家庭で生活するわけではありません。
実親家庭の環境が整った段階で実親の元へ帰る子ども、実親家庭には戻らず里親家庭から自立する子どもなど、様々です。
Q4.里親委託後も、実親と子どもが交流することがある → ○
里親委託後も、実親と子どもが会うことはできます。
実親との交流により、子どもが不安定になったり、気持ちの揺れを表すこともあるので、里親さんだけでなく、保育園や学校の先生方にもそれを受け止めていただき、一緒に支えていただけたらと思います。
Q5.里親委託になると、里親の苗字を名乗る必要がある → ×
里親委託後、里親の苗字を名乗る子もいれば、本名を名乗る子もいます。
子どもの意見を聞きながら、関係機関と一緒に子どもにとって良い方法を考えます。
Q6.子どもの子育ては里親だけで行う → ×
「チーム養育体制」のもと、さまざまな支援機関の他、保育園や学校などの地域の関係機関も一緒にお子さんの育ちを支えます。
▼制度や要件について詳しくはこちらをご覧ください!
里親家庭と一口に言っても、お子さんが実名を使用しているか「通称名」を使用しているか、また実親との交流があるかないか、さまざまなケースがあります。
それもさまざまな家族のかたちの1つであると「普通」に受け止めていただきたいという一方で、里親家庭ならではの配慮が必要な場面もあります。
そうしたときに制度を知っておいていただくことが、里親子が安心して生活することにつながると、お話をいただきました。
里親さんの生の声
続いては、実際の里親さんの声です。
バディチームが2023年6月に開催したオンラインイベントのアーカイブ動画から、出演された里親さんのお話をみなさんに観ていただきました。
▼オンラインイベント
里親家庭の親子を地域で支えるためのトーク&ミーティング~従事者むけ意識調査と当事者の声から~
▼アーカイブ動画の全編はこちら!
(32:05付近から里親さんのお話がご覧いただけます)
里親になったきっかけや暮らしの中での嬉しかったエピソードもご紹介いただきながら、「もっと理解が広がるといいなと思うのはどんな場面か」についてお話をいただいています。
公共機関での手続きの場面や、医療機関で保険証ではなく「受診券」を利用すること、また小学校での入学式でお子さんの姓を戸籍名と通称名のどちらを利用するかということ。
また子育てひろばや発達支援の機関などで、出生体重や出生週数、歩き始めた時期、しゃべり始めた時期を質問される場面が多いこと、など。
反対に、他の里親さんのケースも含めて「こういう対応をしてもらって助かった」というお話も。
小学校での「2分の1成人式」では、みんなの前で発表するという形式ではなく、お手紙を書いて親御さんに渡す形式にしてくれた先生がいたこと。
保育園や幼稚園で、幼少期からの写真を集めてアルバムを制作することになったとき、「私も3才のものしかないからあなたも同じでいいよ」と言ってくれたママ友がいたこと。
そして最後にメッセージをいただいています。
一般家庭も子育てはとても大変。そんなに特別扱いしていただかなくても、、本当に普通に接していただきたいのです。
ただ、幼少期のことを知らないということや、あとは一番感じるのが、里子さんにはもちろん実親さんがいるので、私たち里親に遠慮して話さないことが割と多いのです。
それを保育園の先生や学校の先生が少し拾ってもらって、私たちに伝えてもらえると、何を考えていたのか、どんな考え方をしていたのかを知ることにもつながります。
その辺りは時々、気遣っていただき、声をかけてもらえると、嬉しいなと思います。
ぜひ動画もご覧ください!
ワーク ー「ほんとのママじゃないんだよ」から考える
後半はワークです。
里親家庭で暮らすお子さんが、保育園で他のお子さんとお話をしている場面。
「ぼくのママ、ほんとのママじゃないんだよ。」
「え…?」
という会話に出くわしたとき、自分ならどんな声かけをするか、想像してみていただきました。
お子さんの何気ない会話です。
「そんなこと言っちゃダメ!」と否定するのではもちろんないとして、さてどんな声かけがありうるでしょうか。
先生方からは、
- そうなんだあ、それはどんなママ?
- いつものママともなかよしでいいよね
- そっか、きみはママのことどう思う?
- そうか、そういうことが知りたいと思ってるんだね、あとでママにもきいてみようね
などのアイディアを出していただきました。
まずは受け止める、という姿勢が共通していたことに加えて、「子どもに嘘はつきたくない」、というご意見も印象的でした。
もちろん1つの正しい解答があるわけではありません。
何よりも、自然体で受け止めていただくこと。「ママが2人いることもある」ということを当たり前に受け入れられる先生たちの姿は、きっと里子さん以外の子どもたちの育ちにとっても、大切な糧になるのではないかと思います。
里親家庭の理解者・応援団に
アンケートではこんな感想をいただきました。
- ワークショップ的なことをして頂けたことで自分の感覚が良いと言ってもらえたので、前向きに取り組んでいけたらと思った
- 自分たちも相談ができることがわかって、そこが安心できた
- 受け止めることを大切にしながら、そういう機会があったら関わっていきたい
- 里親についての理解や周知活動等、自分に何かできることがあるのならば協力していきたいと思った
この出張講座は、それぞれの職場に応じた具体的な場面をもとに、里親家庭の親子について想像し、理解者・応援団となっていただくことを願って取り組んでいます。
里親家庭が当たり前に受け入れられ、多様な家族が暮らしやすい「みんなで子育てする社会」は、こうした場での1つ1つの出会いと対話から生まれるだろうと思います。
バディチームでは引き続き、この活動に取り組んでいきます。
おでかけひろば・保育園・児童館・学童、その他の有志のグループでも、ぜひお招きください!
今回お招きいただいた聖ピオ保育園さん、そしてご協力いただいたあいりすさん、ありがとうございました!
出張講座のお申込みはこちらから!お気軽にお問い合わせください。
このイベントは日本財団より助成を受け、2024年度「里親子に対する理解促進および訪問型支援の強化事業」の一環として開催されました。