特定非営利活動法人バディチーム
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コラム 2025.01.23

【保育バカ一代】vol.31 勝手にRちゃん

ある保護者向けセミナー会場の託児ルームで、Rちゃん(1歳)はママが恋しくてギャーギャー泣いていた。

保育スタッフの私が抱っこすると泣き疲れて眠ったので、セミナーが終わってママが迎えに来るまでずっとそのまま抱っこした。

 

結局Rちゃんが笑ったり遊んだりすることは最後までなかったが、この出会いがきっかけで私はRちゃんのママから「私が用事で外出する日に自宅でRの保育をお願いします」と依頼を受け、後日Rちゃんの自宅を訪問することになった。

 

訪問当日、ママと一緒に私を出迎えてくれたRちゃんの様子は普通だった。

とくに笑っても泣いてもいなかったが、きっと託児ルームの時のようにママがいなくなったら大泣きするだろうと私は予測していた。

 

ごはん、おやつ、飲み物、オムツ等の確認が済み、いよいよママが出かける時間になった。

玄関で見送るRちゃんと私に「行ってきます」と言い残し、ママはガチャッとドアを開け、家を出て、そしてドアがバタン…と閉まった。

 

シーン……という静寂がRちゃんと私を包む。

 

さあ、泣くぞ。私はいつでもRちゃんを抱っこできるように身構えた。

ところが、その後のRちゃんの行動は、私の想像の遥か斜め上を行っていた。

 

ママの姿が見えなくなると、Rちゃんはニマ~と笑った。泣き顔ではなく笑顔を見せたことに私は驚いたが、Rちゃんが初めて見せた笑顔は何かをたくらんでいるような、どこかふてぶてしいものだった。

 

やがてRちゃんはニコニコしながらリビングに向かい、ステレオの前で立ち止まった。そして慣れた手つきで棚から1枚のCDを取り出し、それを自分でステレオのトレイにセットして、Rちゃんは再生ボタンをポチッと押した。

 

♪ラーラーラーララララーラーラー!ラーラーラーララララーラーラー!♪

 

サザンオールスターズの『勝手にシンドバッド』に合わせ、Rちゃん(1歳)は激しく踊り狂った。

ものすごく楽しそうだ。あの託児ルームの泣き虫ぶりとはあまりにもかけ離れたその様子を、私はただポカーンと眺めていた。

1歳児をも夢中にさせる国民的バンドに乾杯。

 

 


 

 

事務局スタッフ“しげさん”による保育エッセイ♪「『保育バカ一代』

子どもや保護者との関わりにおいて大切なことやさまざまな保育の現場で感じたことを、あたたかくユーモラスな視点で綴っています。過去の記事はこちらからご覧ください!

 

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