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コラム 2024.07.24

【保育バカ一代】vol.26 ザ・ファーブル Part3

道を歩いているとペチャンコになった虫を見かけることがある。

自然界ではやすやすと人間に捕まらない彼らも、アスファルトの上では為す術もなく人や車両に踏まれてしまう。ただでさえ寿命の短い虫が突然プチッと一生を終えるのはあまりにも切ないので、私は路上を這いずる虫を見つけたらなるべく隅に逃がしたり、空へ飛ばしたりして助けるようにしている。

 

別に善人ぶっているわけではない。私は青虫を助けても毛虫は助けないし、蚊やハエやGは容赦なく抹殺する。自分が生き物の命を選別する勝手な人間であることを、私は自覚している。

ただ、もしも私が助けた青虫がやがて蝶になり、空を自由に飛んでいるのをどこかの子どもが見て「あ、ちょうちょだ~♪」と喜んでくれたら、私のレスキューもそれなりに意味があるのかもしれない。

 

保育園児の兄弟を自宅から保育園へ送る途中、地面をノソノソと歩いているカナブンをみつけた。私がそれをヒョイとつまみ上げて自分の手のひらに乗せると、兄弟は顔を近づけてジ~ッと見たり、指でツンツンとつついたりした。

 

「そろそろ逃がしてあげようか」と兄弟に告げて、私はカナブンをポイッと宙に放った。カナブンは空中でシュッと羽根を広げ、ブ~ンと元気に飛んで行った。弟は「バイバーイ!」と手を振り、兄は「カナブン、おうちにかえれてよかったね」と言った。なんて優しい子たちなのだろう。

 

「じゃあ行こうか」と保育園へ向けて再び歩き出した、その時である。

 

チュンチュンチュンチュンチュンチュン!!

 

背後からスズメのけたたましい鳴き声が聞こえた。私が振り返ると、猛スピードで飛んできたスズメがさっきのカナブンをパクッ!と口ばしで捕らえ、そのままバタバタバターッと飛んで行き、あっという間に見えなくなった。

 

「どうしたの?」と聞く兄弟に、私は「え?……あ、ううん、なんでもないよ。さ、行こ」と答えるのが精一杯だった。

まさにこの世は弱肉強食である。

 

「カナブンがスズメに食べられちゃった」とありのままを伝えて、自然界の厳しさを教えた方がよかったのだろうか……?

 

 


 


事務局スタッフ“しげさん”による保育エッセイ♪

子どもや保護者との関わりにおいて大切なことやさまざまな保育の現場で感じたことを、あたたかくユーモラスな視点で綴っています。 

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