特定非営利活動法人バディチーム
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【開催報告】vol.1 「生まれる前から始める虐待予防~産前産後の家庭訪問型支援の現場から~」

3月14日・21日に子育て支援・虐待防止の活動に関心のある方にむけて、「産まれる前から始める虐待予防~産前産後の家庭訪問型支援の現場から~」と題して、無料オンラインイベントを開催しました。
https://buddyteam202103.studio.site/

 

全国の虐待死事例のうち、発生時点での子どもの年齢は「0歳」が最も多く(40.7%:H30年度)、このうち月齢では「0ヶ月児」が最多となっています。(31.8%:同)また昨年からのコロナ禍に関連して、産後うつが倍増している可能性を示す調査結果も出されました。これらの数字からうかがえるのは、出産の前後に社会から孤立してしまった親子の姿であり、そうした家庭に対する支援の必要性です。

 

現在バディチームで活動をしている、現場スタッフ「子育てパートナー」3名にお越しいただき、パートナー活動の現状やモチベーションについてお話していただきました。今回は3月14日に開催されたイベントの様子をご覧ください。

 

 

【参加者】

NPO法人バディチーム
● 代表 岡田 妙子
● 理事 濱田 壮摩
● 食の支援チーム 渡井 寿子

 

子育てパートナーの皆様
● 渕ノ上さん
● 金平さん
● 迫村さん

 

パートナー’sトーク

上段左から渡井・渕ノ上さん/下段左から金平さん・迫村さん

 

渡井:渡井寿子と申します。2018年頃からパートナー活動はじめて、産前産後支援、保育、家事など様々なご家庭に伺っています。今は訪問型支援のコーディネート業務をバディチームで行っています。よろしくお願いします。

早速ですが、現在パートナーとして活動している3名をご紹介します。渕ノ上さん、金平さん、迫村さん、本日はよろしくお願いします。

Q1. 活動を始めたきっかけは?

 

渕ノ上さん:30代で保育士資格取得!そこから貧困、虐待問題への活動へつながった

 

渕ノ上:私は親が頼れない状況の中で、子どもを育てながらパートをしていました。子どもが病気になった時に、シフトを変わってくれる人がいる時はお願いできるけれども、難しい時は病児保育です。しかしキャンセル待ちになることもあって、兼ね合いが大変でした。そして、自分が病児保育のベビーシッターをやりたいかもしれない、と思って保育士資格を取りました。

 

金平さん:子育てで大変な時期があったので、その分、自分が手助けできたら!

 

金平:自分が子育てをする時に、家庭訪問型支援があったら良かったなと思ったことがきっかけです。また、子どもの保育園の知り合いで、ご家庭の事情から子どもと離れ離れになってしまったお母さんがいました。 少しでもそのようなご家庭の手助けができるようにと思って、バディチームさんに登録させていただきました。

 

迫村さん:末っ子が中学生になったのをきっかけに、ずっとやりたかったお仕事を

 

迫村:バディチームさんに登録するきっかけは、1番下の娘が中学に入ったことです。これから少しずつ自分の時間が取れると思った時に、自分は何をしたかったんだろうと考える時期がありました。そこで若い時に私は乳児院で働きたいと思ったことがあると思い出したのです。複雑な家庭や、お産に関わるような事をしたいと考えてバディチームさんに行き着きました。

Q2 訪問先での支援内容

 

渡井:ここで、今日のテーマである「産前産後の訪問型支援」についてお話しさせていただきます。産前、産後の訪問先での支援内容は主に下記の3つに分けられます。

・家事支援(掃除・調理)
・保育(赤ちゃん・兄弟児)
・買い物、病院同行

 

家事支援(掃除・調理)について:めんつゆさえあればなんとかなる!

 

渡井:お料理の案件も多いですが、食材や調味料がほとんど無い家庭もあるそうです。その中で、じゃがいもしかなかったご家庭があったそうですね。

 

金平:皆さん冷蔵庫に食材が豊富にあるわけではなくて、じゃがいもしかなかったことがありました。その時は正直どうしようかなと悩んだ結果、ジャガイモでニョッキを作りました。離乳食になりますし、お子様も小さかったので。

私が伺ったご家庭のお母さんはじゃがいもだけでも料理の幅が広がるのを見て、喜んでくださいました。あと調味料もがほとんどなくても、めんつゆが大体のうちににあるので、家にあるもので料理させていただきます。

 

渡井:本当に調味料がないお家もあります。金平さんの名言に「めんつゆさえあれば何とかなる」という言葉があります。

バディチームのスタッフでも話題になりましたが、めんつゆがあれば炒め物から煮物も何でもできます。

特に産前産後は体調が不安定ですし、幼いお子さんを見ながらだと時間も限られると思うんですね。すごく豪華な料理よりも、めんつゆだけで簡単に一品作れちゃうと知って、喜ばれる方が多いです。

 

保育(赤ちゃん、兄弟児)について:孤独を感じやすいお母さんのサポートも

 

 

渡井:産前産後訪問型支援でとても大切なことは、お母さんがパートナーとお話しされることです。去年から新型コロナウイルス感染拡大の影響で、産前産後、さらに家にこもってしまって孤独感を感じてしまった方が多いと思います。そんな中で訪問先での会話について、渕ノ上さんのエピソードをお聞かせいただけますか?

 

渕ノ上:私が出産したときはコロナでなくても、産後に大人と話す機会が激減しました。仕事先に復帰するまで、八百屋の人としか話さない、そんな日が続いていました。

今まで一緒に飲んだり遊んでたり、映画に一緒に行ってた友達も赤ちゃんがいることで疎遠になって、孤独感を感じたことがあります。

そんな中でバディチームの活動を通して、家事のお手伝いだけでなく、お母さんともお話をするようになりました。ちょっとでもお母さんに笑顔があると嬉しいなって思うんですよ。

Q3 子育てパートナーのやりがいは?

 

迫村さん:訪問するたびに少しづつお家の中がきれいになっていった!

 

迫村:産前で初めて訪問したお宅は、部屋のあらゆるところが片付いていない状態でした。産後も何カ月か続けて入っている間に少しずつ、部屋が片付いてきて、今となったらずいぶん片付いています。誰かが一緒に片付けてくれる、人がいるとやる気が起こるので、本当に訪問してよかったと思います。

また、もう1つのやりがいは、お子さんの成長を見ることが出来ることです。とても楽しいですし、私も喜びを与えてもらっています。

 

金平さん、渕ノ上さん:笑顔がなかったお母さんが、徐々に生き生きして、笑顔が増えてお洒落や化粧をし始めた!

 

渕ノ上:最初にわれわれが訪問する時はお母さんも不安な状況です。知らない人が突然やってきて、自分の子どもを見るのは若干警戒心があります。しかし、訪問するたびに少しずつ仲良くなっていけることに、やりがいを感じます。

例えば訪問した時、テレビで野球が流れていたので、「お母さん野球好きなんですか?」と聞いたら、やはり野球が好きで話が盛り上がりました。また何回か伺う中で本棚にあった漫画を私も読んでいて、「どのキャラが好き?」みたいなことから、お話を始めることがあります。流れでお子さんの話とか、お家のことを聞くと、別の角度からお話が聞けることもあるので、そのような時にやりがいを感じます。

 

渡井:目に見えての変化はすごく嬉しい気持ちになりますし、子どもは敏感なので、その親の変化を敏感に察知すると思うんですよね。

そんな中でもこれはそうだよねという、みなさん共通のご意見がですね、こちら、「ありがとう」と言ってもらえたこと、です。

最後にありがとうと言ってもらえたこと、そして伝えようとしてくださったお母さんの気持ちは、私たちパートナーにとっては最強の糧になると思っております。

Q4 子育てパートナーの心構え・心がけていること

 

迫村さん:出来る限り要望に沿って、満たしてあげたい!

 

迫村:家庭はそれぞれなので、掃除の仕方や子育てに関する価値観もみなさん違います。お家に入ったらお母さんにどうすれば良いですか?と聞いて、要望に求められたことを出来る限りやってあげようって思います。

あと、お子さんの事で相談されることもあります。まずはお話を聞いて、私は子どもって成長する能力を持って生まれてきていると信じているので、お母さんには「大丈夫だよ」って伝えます。

お母さんから見ると子どもの欠点ばかり見えてしまうんです。でも私から見ると、こういう良いところがあるよ、と教えてあげる。そうするとと、気持ちが変わるみたいです。

 

渕ノ上さん:一期一会

 

渕ノ上:バディチームの活動では継続的に伺うお家もありますが、1回しか伺う機会のないお家もあります。もう二度とピンポンしないお家かもしれないと思って、毎回やらせていただいてます。その一期一会がすごい好きで、ピンポンをするときがすごく楽しい瞬間です。

 

質疑応答

上段左から濱田・岡田・金平さん/下段左から渕ノ上さん・迫村さん

 

濱田:ありがとうございます。ここからは司会を濱田が行わせていただきます。

パートナー’sトークでは、実際にどんな支援活動をしているのかをイメージしていただけたと思います。「とにかくめんつゆなんだ」と言う話や、「テレビの野球で会話の糸口を見つける」話など、具体的にお話いただきました。

 

 

 

3名のパートナーさんから発表いただいたのは、この図の1番下、養育支援訪問という事業での家庭についてです。この他にも産前産後の家庭に対する支援はありますが、家事ができない建付けになっていることが多いです。

保健師さんや助産師さん、栄養士さんといった専門家の助言や相談支援は、もちろんそれはそれで重要な役割を担っていただいています。しかし、一緒にめんつゆで料理をするとか、家事をして、具体的に手を動かしてお手伝いをする、そのような支援をまだまだ広げる必要があると思います。

 

ここからは皆さんから頂いた質問に順次回答させていただきます。

 

Q1 実際に家庭に入る中で困ったことはありますか?

 

迫村:一番困ったのは、訪問した時に食材がほとんどない事です。あるご家庭はナスがどっさりあるのに、ほかのものはほとんどありませんでした。別の日は豆腐がどっさりあるようなお家だったので、何でもいいからご飯を作ってと言われてすごく困りました。

 

Q2 活動の頻度は皆さんどのくらいですか?また、マッチングは自宅の近いところでの活動になりますか?

 

金平:今は週に3回程度で、歩いて行けるような場所が多いです。

 

渕ノ上:私は自分の状況にバディチーム事務局さんに合わせていただいています。今は週に1回、2回で、活動は電車で1時間ぐらいの場所です。

 

濱田: 公共交通機関を使って、訪問していただいている方が多いです。皆さんありがとうございます。迫村さんは、いかがでしょう?

 

迫村:私も自分の仕事もあるので、平均して週に3回ですが、最近はコロナの影響で少なめでした。

地域的には電車を使って30、40分のところが多いです。わたしはどんなところにでも行ってみたいと思っています。地域的に生活の感覚、生活している雰囲気が全然違って、色々見て勉強になります。

 

濱田:ありがとうございます。今後、支援者が増えれば、近い場所で支援ができる体制を作っていきたいです。また1回あたりの時間は2、3時間が基本です。もちろん週に1回の方もいらっしゃいます。ご都合に合わせて、あいた時間で活動していただいています。

 

Q3 自分がスタッフになることを具体的に想像すると時間が不定期にしか空いていないけど、どんなスタイルで活動ができるのか?あるいは自分自身抜群に家事が得意なわけじゃないんだけどと思ってしまいます

 

渕ノ上:私は餃子を作ってくださいって言われたんですけど、与えられた時間とその買い出しや、他のこともあって餃子を作ることができませんでした。こんな私でもパートナーをしているので、安心してパートナーになっていただけたらと思います。

 

濱田:それぞれにできることがあって、できることをやっていただいております。「時間が不定期にしか空いてないけど、どんなスタイルで活動してましたか?」という質問についてはいかがですか。

 

渕ノ上:ある時期は平日に活動していたけれど、今は土日の方が都合がいいですご相談すると、事務局の方が改めてマッチングしてくださいます。

平日でも休日でも、朝昼晩でもニーズがあるので、どの時間帯でもお手伝いさせていただけると思っております。

 

Q4 活動を始める前に不安だったことはありますか?それは活動してみてどう変わりましたか?

 

迫村: 家事ができるのかなとか、ご家庭と関係がうまくいくのかなとか、不安は私もありました。しかし、活動の中で一生懸命やって、何か役に立てるんだなって気づくと不安は少なくなります。

 

渕ノ上:私はあまり緊張しなかったです。保育士なので、保育の仕事をやってきて、それをご家庭でやるだけだったので。 先ほども一期一会と言いましたが 、いろいろな人と出会ったり、いろいろな場所に行くのが大好きなので、ワクワクの方が強かったのを思い出しました。

 

金平:私も何も考えてないのか、あまり悩んだりしなかったです。

 

濱田: 力強いお言葉をいただきました(笑)。家事とか料理できるかなとかっていう不安に感じられる方もいらっしゃいますが、できる範囲でやっていただいて、回数を重ねると解消していただけることが多いと感じます。

 

Q5 料理はできません。トイレ掃除はやりたくないとか、わがまま、希望はいえますか?

 

岡田:基本的には最初に、何が出来る/出来ないかをチェックシートを書いていただいて、それを基本にマッチングです。

また相性はどんな人にでもあると思ってまして、ご家庭との中で難しいとパートナーさん側で感じた時もそれを言っていただいて、マッチングを変更します。

そこは本当に無理なくやっていただければと思っています。

 

濱田:ありがとうございます。無理なく活動を続けていただくことのほうが優先です。それではそろそろお時間となります。ありがとうございました。

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