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お知らせ 2025.10.17
【保育バカ一代】vol.35 桜餅の妖怪、桜の妖精
私が勤めていた保育園には園庭がなかったので、毎日のように園児たちを公園へ連れていった。
その公園にはソメイヨシノの木があり、毎年春になると満開の桜が楽しめた。
そんな私の保育園にサクラモチ子(仮名・2歳)はいた。
モチ子ちゃんのほっぺたはうすいピンク色でぷっくりしていて、ま
満開のピークを過ぎて桜が散る時期になると、公園の地面はピンクのカーペットのように桜の花びらで埋め尽くされた。そのフワフワの踏み心地を楽しむように園児たちが花びらの上を駆け回っていた、その時である。
ビョオオォォォーーーーーーーーーーーーーーー!!
突然の強風で地面の花びらがブワワアァーーーーーッと舞い上がり、私の視界はピンク一色で何も見えなくなった。こんなにすごい桜吹雪は初めてだ。
やがて風が落ち着くと、宙に舞う大量の花びらの向こうに見慣れた公園の風景が浮かび上がってきた。
そして、ピンクのフィルムのような風景の真ん中にひとりの人影が現れた。あの桜餅のようなほっぺたに自分の両手を当てて、まっすぐこっちを向いて立ち尽くしているモチ子ちゃんだった。
突然の桜吹雪にビックリしたのか、それとも桜吹雪がキレイで見とれているのか、あるいはその両方か。
いずれにしても、ひらひらキラキラと舞い落ちる花びらの中に立つモチ子ちゃんの姿は、スモークと紙吹雪で演出されたどんな派手なイベントよりも幻想的だった。それでいてどこか日本の春の原風景を思わせるような、とってもうららかな情景だった。
毎年春になると、私はあの日のモチ子ちゃんのことを思い出す。
「あの子は桜餅の妖怪じゃなくて、桜の妖精だったのかな」と想いながら道明寺(粒粒の桜餅)にかぶりつき、茶をすするのが毎年春の私の楽しみだ。ちなみに葉っぱも食べる派である。

事務局スタッフ“しげさん”による保育エッセイ『保育バカ一代』
子どもや保護者との関わりにおいて大切なことや保育の現場で感じたさまざまなことを、あたたかくユーモラスな視点で綴っています。過去の記事はこちらからご覧ください!