特定非営利活動法人バディチーム
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コラム 2025.08.07

【保育バカ一代】vol.36 おせっかいおじさんとシャラップママ

ある仕事帰りの夜、各駅停車の電車の中は乗客がまばらだった。

私は空いている座席によっこらせと腰を下ろすと、思わずフゥ~と息が漏れた。

 

ガタンゴトン……ガタンゴトン……ガタンゴトン……

だんだんまぶたが重くなってきた。でも、降りる駅を過ぎたら大変だ。

どうしよう……そんなことをボンヤリと考えていた刹那、私は一瞬で目が覚めた。

 

「ギャハハハハハハハハハーーー!」(子どもの声)

 

私の座席から少し離れたところに、外国人の母子3人が座っていた。

6歳くらいの姉と4歳くらいの弟が英語(たぶん)で騒いでいるそばで、母親がムスッとした顔をしている。言うことを聞かないわが子に手を焼いているのだろう。

 

姉弟が騒げば騒ぐほど車内の空気はどんどん悪くなり、いまにも乗客のあいだから「チッ」という舌打ちが聞こえてきそうだった。

 

やがて姉弟は「ジャンケンポン!」とじゃんけんを始めた。

へー日本語もしゃべれるんだ、などと感心している場合ではない。相変わらずムスッとしている母親をよそに姉弟はますます声のボリュームを上げていき、車内のイライラはいよいよピークに達しようとしていた。

 

「ジャッケッポーン!!ジャッケッポーン!!ジャッケッポーン!!」

 

誰かがブチ切れる前になんとかしよう。日本のおじさんはおせっかいだと思われてもいいから、自分があの子たちに「びーくわいえっと、おんざとれいん」と伝えよう(たどたどしい)。

そう思って私が腰を上げようとした、次の瞬間。

 

「シャァーーーラァーーーーーーップ!!!」

………………シーン………………

 

鬼の形相をした母親に怒られて、姉弟はおとなしくなった。

ふたりともグスッ……グスッ……と半ベソをかいている。

 

そんなお通夜みたいな姉弟とは対照的に、車内はなごやかな空気に包まれた。

クックックと笑いをこらえている乗客もいる。

私もププッと吹き出しながら「お母さん、グッジョブ!」とつぶやいた。

 

 


 

 

事務局スタッフ“しげさん”による保育エッセイ『保育バカ一代』

子どもや保護者との関わりにおいて大切なことや保育の現場で感じたさまざまなことを、あたたかくユーモラスな視点で綴っています。過去の記事はこちらからご覧ください!

 

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