特定非営利活動法人バディチーム
インタビュー 2024.04.05

【他団体・多職種による情報共有・事例検討会】vol.9 一般社団法人 彩の国子ども・若者支援ネットワーク

2024年2月9日(金)、日本財団の助成事業『訪問型養育支援強化事業』の一つである『他団体・多職種による情報共有・事例検討会』の第九弾を開催しました。

お話を伺ったのは、様々な困難を抱えている子どもと保護者一人ひとりに寄り添いながら学習・生活支援事業を行う一般社団法人 彩の国子ども・若者支援ネットワーク(以下、子ども・若者支援ネットワーク)です。

 

資料提供:彩の国子ども・若者支援ネットワーク

 

今回は彩の国子ども・若者支援ネットワーク代表理事 土屋匠宇三さん(下段左)と副代表理事 山浦健二さん(下段右)に埼玉県及び県内24市から事業委託を受けて行っている「学習支援・生活支援事業」と「家庭訪問支援事業(子どもの見守り強化事業)」について詳しくお話をお聞きしました。

 

経済的困窮家庭の子どもたちを家庭訪問と学習教室で支える

―最初に子ども・若者支援ネットワークさんの沿革も含めて活動内容を教えていただけますか?

 

土屋さん(以下、土屋):私たちは「1生活困窮者自立支援法」という法律に基づき、「子どもの学習・生活支援事業(以下、学習支援事業)」を主に行っています。

経済的に困窮している家庭で育つ子どもたちの学びと生活を家庭訪問とマンツーマンでの学習教室で支えています。支援対象は生活保護世帯、ひとり親世帯、就学援助世帯の親子です。

 

沿革としては、埼玉県では生活保護世帯の高校進学率が2009年時点で86.9%、全日制に限ると7割というとても低い状況があり、高校に行かない子や通信制高校に進んだ子たちが結果的には再び生活保護を受ける「貧困の連鎖」という深刻な問題がありました。これを何とかしたいということで、今から14年前の2010年に埼玉県が「生活保護受給世帯自立支援事業」の一環として学習支援事業を始め、その事業を我々ネットワークが委託を受けて学習支援事業の取り組みをスタートさせました。

 

では高校に行かなかった子たちがどうしているのだろうと調べてみると、就職先、バイトも見つからず、相談相手もなく孤立して引きこもっている。親御さんに精神疾患や障害があるなど様々な困難な世帯が多く、そのお世話をしていることがわかりました(ヤングケアラー)。

20歳になっても30歳になっても親の世話が続き、また生活保護を受けて貧困のおり、貧困の連鎖が続きます。高校に進学し、卒業して就職などその後の進路を確定して社会人として自立することが本人の人生とっても何より大切であり、貧困の連鎖を断つためにも重要です。

 

でも、「学習教室を開いているからおいでよ」とチラシを配っても、そもそも貧困の連鎖に巻き込まれて学校にも行けていない子が来るかといったら来ないですよね。

「それならこちらから家まで迎えに行こう」ということで、市役所のケースワーカーさんと一緒に訪問したところ、家庭の様々な事情や現状を知ることになりました。

なぜ教室に来れないのか、世帯を訪問して保護者と子どもさんと直接対話しながらその世帯の状況をしり、その状況に見合った支援を探る取り組みを進めてきました。学習支援事業の柱として家庭訪問を行うことは全国的にも先進的取り組みでした。

埼玉県の事業を参考にして、2015年から「生活困窮者自立支援法」が制定され、その中に「学習・生活支援事業」が加わって今の事業の形になりました。

 

資料提供:彩の国子ども・若者支援ネットワーク

 

支援の第一歩になる家庭訪問は、2023年度は約2,000世帯に延べで12,000回ぐらい行っています。

家庭訪問では、まずは親御さんに「子どもさんのことでお困りのことがありますか」という言葉かけを行います。子どものことで悩みをもたない保護者はいないからです。多くの世帯で子どもの学習成績、学習意欲、高校受験などで問題を抱えているので、「子どもに勉強を教えますよ」と学習支援を切り口にしています。何回か行っているうちに、お母さんの方から困っていることの相談が出てくることもあります。

 

企業から食材や日用品の提供を受けているので、夏休みなどに2,000世帯に訪問してお渡ししています。この間も、カレーとレトルトのパックご飯を30,000食ほどいただいたので、「すみません、たくさんあって置いておく場所もないので、もらってくれませんか?」と言って2、3回に分けて訪問してきました。化粧品もお母さんたちが喜ばれるので、大きな箱に入れて持っていき、好きなものを選んでいただきます。

 

子どもを大事にするためにはやはり保護者を大事にしないといけませんし、直接会ってお話や悩みを聴き、信頼関係を築きながら学習教室にも来てもらえるよう働きかけています。

 

私たちは、貧困問題は主に行政や学校など公的機関で解決していかなければいけないと思っています。ただ、困っている家庭ほど、「助けてほしい」と自分から手を挙げられないので、「困窮家庭の情報を得ている行政や学校と連携をして、民間団体である私たちが訪問していく」、それが活動の最大の特徴になります。

 

資料提供:彩の国子ども・若者支援ネットワーク

家庭訪問支援事業について

―ありがとうございます。学習支援事業では、まず家庭訪問をして親と信頼関係を築きながら、学習教室にも来てもらえるように働きかけているのですね。さらに、家庭訪問支援事業もされているのですよね。

 

土屋:はい。2020年からは「家庭訪問支援事業」もスタートしました。この事業では子育て世帯を支援する関係機関が把握している家庭の支援を行っています。学習支援事業と同じように食料品やおもちゃなどを持って家庭を訪問し、保護者の話を聴いたり、子どもと遊んだりしながら支援を行っています。

 

山浦さん(以下、山浦):所属がない子どもや幼稚園や保育園にも行っていない子ども、不登校で小学校に行っていない子どもたちの支援をしてほしいという依頼でしたので、そういう家庭の玄関を開けてもらって、保護者が玄関先に子どもたちを出してくれるかということをまずは目指しました。

 

たまたま自分の知り合いがぬいぐるみをたくさんくれましたので、これは家庭訪問の時に使えると思いました。ぬいぐるみの写真を撮って「この写真を子どもたちに見せたいので、玄関先に子どもたちを連れてきてもらえませんか?」と言って訪問しました。

そうすると子どもたちを連れて来てくれるので、「どれが欲しい?」と聞いて、「これ」と言ったら、「では、次に来る時にこれを持ってきますね」と言って、2回目の家庭訪問を快く了承していただけるという感じです。

 

―なるほど。子どもたちと会うために工夫をされているのですね。行政は何か物を持っていくことはできないので、民間だからこそできることだと思いました。

 

山浦:はい。とにかく玄関を開けてもらうことが一番大事なので、それをどうすればいいかをいつも考えています。

 

土屋:訪問時には子どもと一緒に遊ぶことも多いです。折り紙をしたり、外で遊んだりしているとだんだん子どもが心を開いてくれます。すると「この間、パパが来てさあ」みたいなことを話してくれて、「あれ?パパはいないはずだけどなあ」というようなことがわかります。やはりおうちの中に入ると勘で感じるものもありますし、世帯の状況がわかりますのでそれを行政に報告し、連携をとっています。

 

資料提供:彩の国子ども・若者支援ネットワーク

訪問する家庭の経緯とスタッフについて

―訪問する家庭はどういう経緯で支援につながるのでしょうか?

 

土屋:学習支援事業の生活保護世帯とひとり親世帯については行政の人の努力です。家庭のリストをもらったからといって私たちから勝手に電話をかけて訪問することはできません。生活保護などの申請で行政とつながったときに、こういう事業があることを行政の方から声をかけてもらい、利用の申し込みをしてもらっています。

 

家庭訪問支援事業の場合は子ども担当のケースワーカーさんが各家庭に付いていますので、そのケースワーカーさんたちが家庭への電話や訪問時に案内をしてくれています。

「今度こういう物資を配布する事業が始まったのですが使いませんか?」「事業を始めたのですが、誰も使ってくれる人がいなくて困っていますので、ぜひお試しでいいから使ってくれませんか?」というような感じで紹介してもらっています。

 

―訪問はアポイントを取ってから行かれるのですか?

 

土屋:学習支援事業は状況によりますが、初めて訪問する家庭には必ずアポイントを取ります。でも、精神疾患のお母さんで約束の日を決めると自分を追い込んでしまうような場合は、あえてアポイントは取らずに、「近くに寄ったので」、「今、ちょうどこういうのを配っている最中で」というような言い方で訪問する場合もあります。

 

家庭訪問支援事業は必ずアポイントを取ります。訪問の最後に次の訪問予定日を必ず決めてくることになっているので、そこが訪問支援員の意欲と知恵、工夫になります。「あなたに来てほしくない」と思われたら、次の訪問がなくなってしまいますので、いかにまたお話したいと思ってもらえるかが重要になってきます。

 

―スタッフはどんな方々なのでしょうか?

 

土屋:学習支援事業のスタッフは家庭訪問をする「学習支援員」と学習教室での「ボランティア」と「学習指導員」がいます。

 

家庭訪問をする「学習支援員」は特にフルタイムの場合は教員免許や社会福祉士、臨床心理士や保育士などの資格を持っていることと、学習支援で勉強を教えられなければいけないということで、一応4年制の大学を出ていることなどを資格要件としています。

 

学習教室の「ボランティア」は800人ぐらいの登録があり、全体の2/3が学生さんで、1/3が社会人の方です。

「学習指導員」は100人ぐらいの登録があり、元学校の先生など、教えることに熱心に関わってくださる方です。ボランティアは基本、参加する・しないは主体性に任せていますが、学習指導員は有償のボランティアになり、少し謝礼をお渡しして、毎回必ず来てほしいとお伝えしています。何十年も先生をやってきた方々なので教えるのが上手いです。他にも子どもたちのことをしっかり理解してくださった上で、事業のことも理解してくださっている方にはこの学習指導員になっていただくこともあります。

 

山浦:家庭訪問支援事業の訪問支援員は、ボランティアではなく全員雇用契約があり、現在は常勤、非常勤合わせて31人います。子ども食堂を運営している方や学校のPTAをしている方、主任児童委員や民生委員を経験されている方もいます。

相手のニーズをいち早くキャッチし、訪問につなげる

―ありがとうございます。ここからは、バディチームとの事業とも関連が深い「家庭訪問支援事業」についてもう少し詳しく教えていただけますか。

1回の訪問時間など、どんな体制で訪問されているのでしょうか?

 

山浦:訪問時間は世帯によってさまざまです。家の中が散らかっているから玄関先も開けてくれない家庭もありますし、逆に部屋に上がっていろいろ話をしたいという家庭ありますので、私は最高で2時間半までいたことがあります。平均的には大体1時間ぐらいでしょうか。

訪問支援員は2名、もしくは3名の複数体制で訪問しています。子どもが6人、7人いる家庭の場合は受け入れが良ければ3名で行き、1人は必ず保護者に付いて、残りの2人で子どもと一緒に遊ぶというようなことをやっています。

 

1カ月に1回ミーティングを行い、初回訪問の前には「この世帯だったらどの年代のスタッフがいいか、男女はどちらがいいか、誰と誰で行こうか」というような点を決めています。訪問している家庭の事例共有も行っています。

 

一番大切なことはチームワークだと思っています。学習支援もそうなのですが、やはりどこもチームワークなのです。それこそ一緒に行く人があうんの呼吸でないと、そろそろ帰ろうかと言っているのにこちらの人がまだまだ話していたりすると帰りづらくなってしまいますし、そういった空気をお互いに察することが大切ですね。

 

―行政から訪問してほしいと言われている家庭にはほぼ入れている感じでしょうか?

 

山浦:食材を持って訪問をすると受け入れが良いですね。当然断られる世帯もありますが、私の感覚ではおおよそ8割ぐらいは入れていると思います。実際に入った後に拒否する家庭はありません。

 

―拒否される家庭はないのですか。それはすごいですね。

 

山浦:はい。やはりそのぐらい誰かに話を聴いてほしい、経済的に本当に困っているという家庭が多いのだと思います。食材が欲しいという相手のニーズを私たちが早くキャッチして、どうしたら拒否されないかを考えるところから始めているので、その効果があるのだと思います。

ニーズという点では、もともと学習支援をしている団体なので、「こうやってひらがなの勉強ができますよ」という話をすると、親にとっては学校に行けていない子どもがこの先、勉強で集団に追いつくのは大変だと分かっているので、喜んでくれることもあります。

ゴミや物があふれている家の場合は勉強自体を玄関先でやることもありますし、家庭に合わせた形で行っています。

民間の強みを活かして支援する

―訪問されている家庭の様子など、差し支えない範囲で教えていただけますか。さらに皆さんの支援のあとには、どんな支援につなげていくことが多いのでしょうか?

 

山浦:やはり経済的に厳しい家庭が多いので、食料支援はすごく喜ばれますね。ただずっと私たちが食料支援をできるわけではないので、地元の子ども食堂やフードパントリーにつなげることになります。自分たちだけで行けない場合、最初は同行するのですが、次からはなんとか自分たちで行ける手段を一緒に考えたり、あるいはフードパントリーにお願いして、自宅に持ってきてもらったりすることもあります。

 

今までに子ども食堂やフードパントリーに申し込み申請をしたことがない親御さんも多いので、それができたことで自信になって、例えば病院の予約や保育園の申請などが自らできるようになったというのもあります。

 

―子ども食堂などに一緒に同行したり、申込み手続きなどのお手伝いもされるのですね。もしかしたら、子ども食堂やフードパントリー自体を知らない可能性もありますので、そうした情報提供などもされているのでしょうか。

 

山浦:私がこれまでやってきて感じているのは「行政拒否」の家庭が結構多いということです。どうしてかと思ったら、やはり行政の人に「ちゃんと養育をしていない」と思われたくないというのが一番にあると思うのです。

そうなると、親がその「養育」というキーワードを自分から探し出すのを嫌がることが多く、結果、情報自体を得ることがないのです。そういう図式があるので、こちらから無理に情報を渡すのはなかなか難しいと思っています。

 

行政としては予防接種や病院の受診をしてほしくても、家庭が行政を拒否しているので「子ども・若者支援ネットワークさんから言ってください」とこちらにお願いされてしまいます。

ただ私たちも言うタイミングを間違えると拒否されてしまいますので、その辺は慎重になりますね。

 

―拒否をされてしまうと、この先の訪問ができなくなりますしね。

 

山浦:はい。ですので、まずは関係性を作ることが一番重要です。信頼関係ができると「子ども・若者支援ネットワークさんが言うなら行こうかな」と言ってくれる家庭も出てきて、それで他の支援につながった家庭も多いです。

 

―そうですよね。行政と民間ではできることの違いがありますし、それぞれの役割分担を活かして支援をしていくことが大切ですね。

アドバイスをせず、保護者の話を聴くことを大切にする

ーバディチームも行政と連携して事業を行っていますが、やはり行政は指導的な立場で、私たちは実際に家事や育児をしながら家庭に寄り添う立場という役割分担があると思っています。現場を訪問する子育てパートナーにも寄り添う姿勢が大切だと伝えているのですが、皆さんが訪問支援員に伝えていることはありますか?

 

山浦:一番は「アドバイスは絶対にしないでください」ということです。訪問支援員の話を聞きたいと思っている保護者はいません。自分の話を聞いて欲しいと思っている保護者がほとんどです。

ただ、どうしてもアドバイスをしたくなってしまいますよね。これはいろいろな場面でお話しているのですが、小さな女の子がお父さんとお風呂に入った時に、言うことを聞かないので、お父さんがシャワーヘッドでその子を叩いてしまったということがありました。お母さんから「子どもが言うことを聞かないから仕方ないですよね」と言われた支援員が、「怒りは6秒たてば収まりますよね」とひと言、言ってしまったのです。そうしたら、もう次からその話は一切してくれなくなってしまったので、アドバイスは絶対にしないようにと事あるごとに言っています。

 

―同じですね。私たちも何を言われても第一声では否定しないということを研修の中で伝えています。訪問の前には研修などはありますか?

 

山浦:そうですね。月に1回~2回のミーティングで、訪問中に困ったことを出してもらい、それを支援員間で共有し、解決策を皆で考えます。新しく入った支援員には必ず個別で訪問の心得のような研修を行っています。ミニマニュアルがあるので、それを見ながら実施します。

 

資料提供:彩の国子ども・若者支援ネットワーク

寄付を通しての連携

―続いては、運営についても教えてください。委託事業を多く行っていらっしゃいますが、その他に寄付などもかなり集まっているのでしょうか。

 

土屋:いえ。寄付はほぼ物品でいただいています。

一番多いのはパルシステムです。パルシステムの会員が3,000万人いますので、ぬいぐるみや絵本、おもちゃを毎週のように持ってきてくれます。

 

山浦:パルシステムからは他にも伴走型の「*2パルシステム給付型奨学金」をいただいています。これは学びの意欲を持ちながら世帯の経済的理由から進学が困難な大学生に対して、包括的に支援する学費助成制度です。

パルシステムの会員さんが親代わりというかたちで毎月寄付をしてくれた金額を奨学金として給付しているのですが、大学生だけではなく、伴走している私たちの団体にも伴走費用をいただいています。

そのおかげで、基本的には高校生までしか支援ができないのですが大学生も伴走することができ、当法人で行う家庭訪問支援事業は今は特定妊婦から所属のない子どもたち、小学生、中学生、高校生、大学生まで切れ目なく支援ができるようになりました。

 

土屋:他に、葬儀屋さんが葬儀場まで送るためのマイクロバスを貸してくださいました。葬儀がない時は使っていないのでよかったら使ってくださいということで、20キロぐらい離れた農家さんで農業体験やいちご狩りやミカン狩りをさせていただいたことがあります。農家さんは農業のことを知ってほしいし、来てもらえるならいくらでもどうぞ、という感じでしたが、そこに行く足がなかったので葬儀屋さんのバスは非常にありがたかったですね。

 

―そうした連携はお互いにありがたいですね。他にもありますか?

 

土屋:学習教室を開催する場所を医療法人から一棟まるごと提供していただいたり、ある企業からは、「夜は社員もいないですし、冷蔵庫を二つとキッチンも整備したので、ここでご飯を作って食べてください」と社員食堂を貸していただいたりしています。

 

山浦:大口寄付でいえば、先ほどのパルシステムともう一つが社会福祉協議会です。埼玉県の社会福祉協議会が、赤い羽根募金やコロナの食材確保でレトルトの白いご飯やカレーなどを埼玉県全体で30万食を購入しました。そのうちの3万食を「子ども・若者支援ネットワークさんが配ってください」と地域の家庭とのつながりがある私たちに持って来られました

その次に大きい寄付は農協です。毎週のようにお野菜をいただき、お米も毎年1トン近くもらっています。やはりお米が一番喜ばれますね。

家庭に支援品を届けることで見えてくること

―先ほど様々な物品を持って訪問をされているお話をお聞きしましたが、このような形で集まっているのですね。

 

山浦:支援品を持っていくことで、意外な親子関係なども見えてきます。全部を差し上げるわけではなく、欲しいものだけ取ってくださいと言うと、大体その家の食生活も分かりますし、家族内での関係性、子どもへの思いを持ってその食材を取っているのか、自分が食べたいだけで取っているのかも分かります。やはり無言で取る人はいなくて、「これ、誰々ちゃんが喜ぶかなぁ」と言いながら取ってくれたりします。物を通じて人間関係を測るではないですが、やっていく中でそういう点も分かるのは大きいと思っています。

 

例えば、お母さんが入院してしまって、一時保護所も入れないので仕方なく子どもだけ5人で生活している家があるのですが、「食材以外でも何か困っている物はありますか?」と聞くと「洗剤が欲しいです」と言うので、「その洗剤が欲しいけど、洗濯はみんなでどういうふうにやっているの?」というような会話のきっかけにもなっています。

 

―なるほど。物品をお渡しして家庭に喜ばれるだけではなく、そこから支援をするにあたっての大切な点も見えてくるのですね。

それでは最後になりますが、土屋さん、山浦さんお二人それぞれの活動への思いやこんな社会になったらいいな、ということがあればお聞かせください。

子どもが夢や希望を持ち、幸せを感じられる社会に

土屋:子どもが幸せな社会は、大人同士も豊かな関係を築いていくことができるので豊かな社会だと思っています。

では、どんな時に子どもは「幸せだな」と感じるかと言いますと、一つ目は「君のことを分かりたいよ」という温かい声がけをしてもらった時です。

二つ目は学習を通じて自分の知らない世界がパッと広がって、「できた」「分かった」と感じた時です。

三つ目がやはり友達や仲間と思いっきり遊んでいる時は本当に幸せですよね。

四つ目が決定的で、「こんな大人になりたいなあ」という大人と出会えた時です。多くの場合は親しか知りませんので、「自分のことを助けてくれる人がいる」「自分のためにこんなに関心をもってくれる人がいる」、そういう大人と出会えた時に「ああ、この社会は捨てたものではないな。もしかしたら、こういう人もいるんだな」という夢や希望がつながります。

子どもがこんな幸せを感じられる社会になっていくといいなあと、日々思いながら活動しております。

子どもも親も世帯も全部大事にしていくことが幸せにつながる

山浦:前職は児童相談所の児童福祉司だったので、子どもが不利益を受けていないかということが私の人生の命題なのですが、やはり子どもたちを支援するだけでは不利益を受けている子どもは減らないですし、親を指導するだけでも減りません。

今、私たちが支援する中で大事にしているのは、「まず保護者を大事にしていこう」ということです。それが子どもを大事にすることにつながっていくと思っています。

 

例えば訪問する時にはお母さん用のセットを作っていきます。靴下とホッカイロとティーバッグを入れたお母さんセットを、「お母さん頑張っているよね。これ、私たちからのプレゼント」と言って渡します。そうすると、お母さんはすごく喜んでくれて、いろいろな話をしてくれます。

子どもも親も世帯も全部大事していく。先ほどの土屋さんのお話にもありましたが、やはり人を大事にしていくことが幸せにつながるのではないかと思っています。

 

全国で、誰にも相談できずに自宅で出産するケースが年間100件ぐらいある中で、コインロッカーなどで亡くなる赤ちゃんが10人ぐらいいます。私たちが委託事業で実際に関わった中で、今までに自宅出産が3軒ありましたが、3軒とも産まれた赤ちゃんはすくすくと育っています。この3軒を救えただけでも大きな意義があると思っていますし、自分たちに何ができるのかということを日々考えながら活動しています。

 

―子どもに対しての温かな視点が本当に素敵です。また、子どもの支援のためにはまずは保護者を支援し、家庭全体を大切にすることはバディチームの活動でも目指していることなので心から共感しました。

土屋さん、山浦さん、この度は貴重なお話をありがとうございました。

 

1 生活困窮者自立支援制度における学習・生活支援事業
2015年に生活困窮者自立支援法が制定され、生活に困窮している世帯への支援が始まりました。その中の支援の1つに、子どもの学習・生活支援事業があります。子どもの学習支援をはじめ、日常的な生活習慣、仲間と出会い活動ができる居場所づくり、進学に関する支援、高校進学者の中退防止に関する支援等、子どもと保護者の双方に必要な支援を行います。(厚生労働省)

 

*2 学びたい若者たちへ「パルシステム給付型奨学金」スタート  生活相談や社会体験もあわせた伴走型支援 (2020年1月24日)

 

▼ 一般社団法人 彩の国子ども・若者支援ネットワーク

 

 

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