特定非営利活動法人バディチーム

【保育バカ一代】vol.17 ザ・ファーブル Part2

夏の始まりを告げる虫がセミならば、夏の終わりを告げる虫もセミである。秋が近づくにつれて鳴き声が減り、そして死骸が増える。あの日の朝もそうだった。

 

9月某日。団地の10階に住んでいる5歳のTくん(前回も登場)を保育園に送るため、私はエレベーターで10階へ上がった。チーンと開いた扉をくぐって外通路に出た私はギョッとした。大量のセミが仰向けに転がって死んでいたのだ。

 

数えたら10匹、すべて羽が茶色いアブラゼミだ。虫好きのTくんがこれを見たらいろいろと面倒くさそうだが、かといってわざわざ片付ける気にもなれない。私は「もう知らん!」とやけくそな気持ちでTくんの家のピンポンを押した。

 

お母さんと一緒に出てきたTくんは案の定、セミの死骸に飛びついた。それをしゃがみ込んでジーッと見つめるTくんを、お母さんが玄関先から不安そうな表情で見守っている。お母さんはセミが大の苦手だった。

 

私がTくんのそばに行くと、Tくんは私に「さわってみてー」と言った。なんでお前はいつも自分でさわらずに人にさわらせようとするんだ、と腑に落ちないものを感じながら、私はそこに転がっているセミをよく見た。アリがたかっていようものなら死んでもさわりたくないが、幸いアリは1匹もいなかった。少し安心した私は、セミの死骸を指でツンと押してみた。

 

カクカクカクッ、とセミの足が動いた。

 

「エッ、生きてる!?」と思わずセミを拾い上げると、セミはバタバタバターッと羽ばたいて私の手から飛び立ち、空の向こうへと消えていった。

 

Tくんが「つぎも!」と催促してきたが、言われるまでもない。私は残りのセミも片っ端から拾い上げて生死を確認した。その結果、死骸だと思っていた10匹のセミはすべて生きていて、みんな元気に羽ばたいて飛んでいった。

 

「ぜんぶいきてたー!」と母の元に駆け寄るTくん。私も「全部生きてました!」と興奮していた。お母さんは笑みを浮かべつつも、完全にドン引きしていた。

 

セミも人間のように仰向けで寝る習性があるのだろうか……?

 


 


事務局スタッフ“しげさん”による温かく、時にユーモラスな保育エッセイ♪ 

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